おまけ、ルガルの偉大さを垣間見る
ルガルの魔法で廃村へと移動すると、目に入ったその光景に驚愕した。
なんと数えきれないほどの人達がいて、皆忙しなく動いていたのだ。
「な、何事……??」
以前ゲームでプレイした時には、数人の職人さんとその家族しかいなかったはず。
それなのに、今はこんなにも多くの人達がいるなんて……うう、またゲームと差異が出てるよ……。
「ひ、光の精霊様!!」
「んっ?」
呆然と辺りを見回していると、あわあわと大慌てでこちらに駆けてくる白いローブを纏った男性が見えた。
その後ろには、早足で歩く領主様もいる。
その隣にいるのは…………あっ、お、王様じゃない……!?
「光の精霊様、この度は、この土地にご光臨戴き、そのお姿を拝する栄誉を得ました事、深く深く御礼を申し上げます。私、大神官を務めさせて戴いております、シンダル・キョトカンと申します。只今、御身を祀る神殿を急ぎ建設致しております。ご光臨にお迎えの準備が間に合わぬ事、深く深くお詫び申し上げます。どうか、寛大なる御心でこの不手際をお許し下さいますよう、平に平にあい願い奉ります」
「光の精霊様。この地の領主、シュリフ・ラッセルにございます。この度は我が領地にご光臨戴き、恐悦至極にございます。お迎えの支度がいまだ整わぬ事、面目次第もございません。どうか平にご容赦のほどを」
「光の精霊様、私はこの国の王、ヴィオーマ・ライグランにございます。この度は我が国へご光臨戴く栄誉を得まして、歓喜の念にたえませぬ。お迎えの準備が整わぬ不手際については面目次第もございませんが、只今できうる限りの職人を投与し、迅速に進めておりますゆえ、どうか寛大なる御心で今しばらくの猶予を下さいますよう、平にお願い申し上げ奉ります」
すぐ目の前までやって来た三人は地面に膝をつき、深く頭を下げて口々にルガル光臨の礼と謝罪を告げた。
ル、ルガルって領主様や大神官様、王様までもがこんなに丁寧に対応するほどの凄い存在だったんだ……。
わ、私、いまだにルガルのお腹の袋の中にいるんだけど……い、いいのかな……??
「丁重なる出迎え、感謝します。我が主となったソラより大まかな事情は聞いています。そなた達にも急な事態であったでしょう。見れば、我が住処となるものの建設は短時間であったろうにも関わらず進んでいるように思われます。そなた達の誠意も伝わろうというもの。なれば私は素直に完成を待ちましょう。我はしばらくソラと行動を共にするゆえ、我の事は気にせず進めなさい。建設に関わる者達には決して無理をさせぬよう」
「「「は! 寛大なる御言葉、有り難き幸せに存じます!! 」」」
「さて、ソラによれば、聖女という者達の一行と共に旅をせよとクーガルーゼン様より命じられているとの事。その者達は、今どこに?」
「は、既に伝令を出し、この土地に向かうよう手配しております。ですが到着までには暫し時間がかかりましょう。それまでは……シュリフ」
「は。どうか我が館にお越し下さいませ。ご滞在の用意は既に整えてございます」
「なるほど。……それでいいかしら、ソラ?」
「えっ!? あ、は、はい!」
「そう。ならば参りましょう。世話になります、シュリフ・ラッセル」
「は! ではご案内致します。どうぞこちらへ」
「私も随行させて戴きます」
「私は、こちらで建設の監督と指示を致しますので……御前を失礼させて戴きます。この度は、御身を拝させて戴き、誠に光栄にございました」
え、大神官様は残るんだ……。
跪き、頭を下げたままの大神官様を後目に、私達は王様と領主様に先導され、ラッセルフォームの領主館へと移動して行った。
その間も私はずっとルガルのお腹の袋の中にいて、ルガルを見ても慈愛に満ちた微笑みを向けられるだけで、おろしてもらえそうな気配はない。
……まあ、別にいいんだけどね。
ここ、なんだか安定感と安心感が凄い。
ルガルはカンガルーの見た目を裏切る事なく、ピョンピョン跳ねて移動しているのに、何故かあんまり揺れないし。
王様達の態度からも感じられるけど……ルガル、偉大。