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おまけ、ゲームをする 4

残酷描写があります。

ご注意下さい。

「あああああ……また、駄目かぁ」


 "ゲームオーバー"の文字を目にしながら、私は激しく肩を落とした。

 あれから何度もプレイして、ヴィナートギルへ行ったり、ラッセルフォームへ行ったりしながら、どれだけ違う行動を取っても、一ヵ月程が経つと必ずあの黒い影が現れ、『死ネ!』の言葉の後に画面が赤くなり、ゲームオーバーを迎え、同じワンポイントアドバイスが表示され、リスタートになるを繰り返し、今に至る。

 もはや一日三時間という制限はとうに越えてしまい、翌日改めてのプレイにまで突入していた。

 そのまま領主館に留まってプレイし続けるのは迷惑になるだろうと考え、今いるのはラッセルフォームの宿屋だ。

 あの謎の黒い影の脅威に対する対策方法をしっかり立てられなければ、現実で行動は起こせない。

 何しろ、自分の命がかかっているのだ。

 けれど……どうしたら回避できるのだろう?


「選択肢にはないから、村とヴィナートギルとラッセルフォーム以外へは移動、できないんだよねぇ? でも、その中で行動してると、約一ヵ月であの黒い影が来る……。……う~ん……? う~、うぅ~ん……?」


 私は眉間に眉根を寄せながら言葉にもならない声をぶつぶつ呟き、ただボタンを押して色々な場所にただソラキャラを移動させ続けた。

 すると。


「あれ? 誰か近づいて来た……って、これは」


 "シンが現れた!"


『ソラちゃん? さっきからギルドに出たり入ったり、何やってるの? もし今日何をしようか迷ってるなら、俺らの依頼に同行する? まあ、護衛依頼で他の街に行くから、今日一日じゃ終わらないし、長期になるけど、それでも良かったら、さ?』


 "シンに誘われた! どうしますか?"

 ・『はい、一緒に行きます!』

 ・『ごめんなさい、遠慮しておきます』


「えっ、ほ、他の街? 長期!?」


 長期間、他の場所に行ける!

 しかもシンさん達と一緒なら、もしその場所にあの黒い影が来たとしても撃退できるかもしれない!!


「勿論、"はい、一緒に行きます!"、と!」


『そう、じゃあ一緒に行こうか。支度しておいで。リョソン達とは街の門で待ち合わせだから、支度終わったらそこに来てね。あ、今回から、以前話した俺達のパーティーメンバーの魔術師、カイが復帰するから。後で紹介するね』

『はい、わかりました!』


「やった……! これできっと大丈夫だぁ!」


 シンさん達と行動を共にする事になって、私はホッと安堵に胸を撫で下ろした。

 そこからはもうウキウキとゲームを楽しみながら進めて、一ヵ月半が経過し、そして。

 あの黒い影が、現れた。


『死ネ!』

『うわっ!? な、何だこいつ、いきなり襲ってくるなんて!?』

『皆、気をつけろ! こいつかなりの強さだ……って、うわぁっ!!』

『カイッ!! はっ……速い!? ぐあっ!!』

『リョソン!! くそっ……ソラちゃん、逃げるんだ!! 俺が時間をかせっ……うっ!!』

『シ、シンさんっ!!』


「え…………??」


 カイさんやリョソンさん、シンさんのキャラの横を、黒い影が一瞬で移動し、通り過ぎていく。

 その度に各キャラに斜めに赤い線が走り、そして、倒れていった。

 更にそれは、私、ソラキャラにも走り…………また、ゲームオーバーの文字が浮かぶ。


「な、何、これ……? ゲーム、オーバー、って……え、シンさん、は? リョソンさんは? カイさんは……? ……み、皆、死んじゃっ……!?」


 呆然と画面を見ながら、とてつもなく恐ろしい結末になった事を頭が理解すると、体が小刻みに震え、とめどなく涙が溢れてくる。

 この結末は、私の選択が招いてしまったのだ。

 ゲームだとはわかっていても、自分がしてしまった事の恐ろしさに震えと涙が止まらない。

 もし、現実でこの選択をしていたら、本当にシンさん達を死なせてしまうところだったのだ。


「……だ、め……ゲ、ゲーム……続けなくちゃ……私は勿論……誰も死なせないように……なんとか、方法……見つけなくちゃっ……!!」


 私はボロボロと涙を流しながら、震える手でゲーム機を持ち直す。

 滲む視界の中、"リスタート!"の文字が出るのを待つ。

 しかしまず出てきたのは、今までとは違う"ワンポイントアドバイス"だった。


 "ゲームオーバーになってしまった貴女へ。回避の為のワンポイントアドバイス"

『ありゃりゃ。また同じ原因でゲームオーバーになっちゃったねぇ。どうやらこれの回避の難易度はかなりのものだね! こうなったら、クーガルーゼン様に相談に乗ってもらおう! お呼びするね!』


「…………へ…………っ?」


 意味のわからないその文字に疑問の声を上げると同時、画面が眩い程の強い光を、放ったのだった。

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