3ー1 ウィル編 欲望
雨が降る日だった
ジャンの店に駆け込んで来る男が居た。
「ここなのか?
時間を越えることが出来る店は?」
「そうだが、随分なご挨拶だな?
名乗りもしないで・・・」
ジャンは少し不機嫌そうに答えた。
「すまない。俺はウィリアム・・・
ウィルでいいよ。」
ジャンは言う
「今日限りで
もう会わないからな〜・・・」
そしてこう付け加える
「アンタみたいのは
後悔するんじゃないのか?」
ウィルは口を尖らせて返す
「後悔するくらいなら
最初から来ないさっ!」
呆れた態度のように
ジャンは無言でペンとメモ、
そして珍しくコーヒーを出した。
「悪いが、代金は先払いだ」
ウィルはコーヒーを慌てて置きながら
ジャンへの報酬を支払った。
「落ち着いたなら、始めるが・・・」
ジャンはロッカーを指差した。
「なんだよ着替えなんかしないぜ?」
「入るんだ。」
「はぁ?からかってんのか?
そうか分かったぞ!金ふんだくって
閉じ込めようってんだな?」
ジャンは明からさまに呆れた。
「なら、やめとけ
金は返すから 今すぐ帰れ」
「あっ、あっ・・・分かったよ
すまない 言う通りにするよ」
「怖いなら、自分で閉めろ」
扉を閉めるタイミングをウィルに委ねた
少し考えたあと、ウィルは深呼吸して
思い切って扉を閉めた
「暗いな・・・」
と言った瞬間 ウィルの身体は消えた。
ジャンは
「面倒くさいヤツが消えたな」
とボソッと呟いた。
またしても奥からレオが現れ
「行かせて良かったと思うか?」
と聞いた。
するとジャンはそのセリフに
被せるように返した
「報酬は受け取ったからな」
レオは渋い顔をした
ウィルが向かった先・・・
それは5年前の古びた街だった。
とあるビルの前で立ち止まると
ウィルは覚悟したように
ビルへと入っていった。
そこの地下では博打が行われている。
ルーレットにポーカー
ブラックジャック
酒とタバコの匂いで充満した部屋は
殺伐としていた。
金に目が眩んだ人間が
賭け事をしているのだから仕方ない。
皆 無我夢中になっていた。
「おいっ!ウィルじゃないか」
声をかけてきたのはルーレットで
ディーラーを務めるルイスだった
「またボランティアに来たのか?
ガッハハハハハ」
ウィルは睨み返し
「見てろよ!」と言った。
チップに替えた金を持ち
ルーレットに座ると
「強めのジンをくれ!」と酒を煽った。
そして 何ゲーム目かを聞くと
「ちょうど10ゲーム回したが、何だ?」
とルイスが答えた。
ウィルはキッチリとチップを揃えると
「とりあえず、ここだ」
赤の枠にチップを3枚置いた
ルイスは笑いながらルーレットを回す
しばらくルーレットの中を
ボールが回り
ストン と入ったポケットは
ウィルの指名した赤枠だった
見事に的中したことに
周囲はどよめいた。
まさかウィルは
5年もさかのぼり
これで全て取り戻すつもりなのか?