2ー2 マリー編 原点
ジャンから告げられた言葉に
出直す気持ちを固めたマリーが
店に戻ったのは
間も無くのことだった。
「今度は大丈夫 送ってちょうだい
それに、持ち物に制限は無いわよね?」
ジャンは頷くと、改めて聞いた
「本当にいいんだな?」
マリーは赤ん坊のジェシーを見つめ
「この子が居てくれたらそれでいいわ」
ジャンは飲みかけのコーヒーを置き
ロッカーを指差した。
「あれだ。」
大型の装置でも想像していたのだろうか
マリーは不思議そうに
ロッカーの前に立った。
ジャンは笑みを浮かべながら
「本来なら、2人分頂くんだがな」
そう言って扉を開けた。
マリーはジェシーと共にロッカーへ
たどり着いた先は
ジェシーの生まれる一年前
ジェシーが一歳なので
2年さかのぼったことになる
マリーは自身の住まいへと
歩みを進めていた。
そして一緒に持ち込んだバッグを
開けて中を調べると
一つの鍵を取り出しドアへ差し込む
昔の住んでいた時の部屋の鍵だ
中に入るとシャワーの音がする。
!?誰か居る!
だが、マリーは動じることなく
シャワーを浴びて出て来る人物を
大きなソファーで座って待っていた。
もちろん、出てきた人物は
悲鳴をあげた
「キャー 何? 誰?」
子供を抱く姿を自分自身だと気付かない
「私はアナタ、アナタの未来が私」
「だって、何よその子」
「インターホンだと、外にその声
全部聞こえちゃうから、中に入らせてもらったわ。この子はあの人との子よ」
「えっ?いつの話・・・?」
「今からだと、一年くらい先かしら」
「んで、何しにこの時期に来たの?」
シャワー浴びたての格好で
タオル一枚の姿で立っている
過去の自身を着替えさせ
向かい合わせに座ると子供を抱きながら
話を始めた。
「あの男は最低よ」
当時、交際していたウォルトのことだ
ジェシーが生まれてすぐに
他の女と蒸発してしまったらしい
しかも
交際開始直後から何人もの女と交際し
マリーを騙し続けていたというのだ。
「それで、どうするの?」
「手を汚す様なことはしたくないの
別れなさい。」
「今は嫌よ 好きだもの」
聞き分けの無い自身に腹が立ったが
証拠を見せると言い
世間の目に触れぬようジェシーを抱かせ
変装をした。
街へ行くとウォルトを見つけるのに
時間はかからなかった
見たこともない女と
車でデートをするウォルト
涙が溢れてくる若いマリー
2人のマリーがタクシーで追った。