1ー4 ザック編 強すぎる思い
高価なスーツに身を包む男は
ザックがタイムスリップしたことを
知っていた。
「あんたは何者なんだ?」
ザックの問いかけには
答える事はせず低い声でゆっくり
話を始めた。
「人の命を奪う為に来たのなら
お前の選択は間違ったな」
そう言うと徐に
スーツの内側に手を入れた。
撃たれるかもしれないと思ったザック
しかし、男は
タブレットの端末画面をザックに見せた
そこには、エリシアの危篤を見守り
ベッドの横で泣いているザック・・・
だが、男が指差したのは窓だった
小さかったが映り込む影が一人
「これは、君だよ」
ザックはハッと息をのんだ。
「その時代まで生きているということは
カイルでもないのか?」
自分自身を完全に見失っていた
「俺は一体、誰の子なんだ!」
男は押し迫る様に言った
「問題はそこではない
自分がどうやって生きるかだ!
エリシアはなぜ、カーテンを閉めきりに
していたと思う?」
ザックは更に混乱していたが
急に背筋が凍る様な感覚になった。
それは
ザック自身の存在が・・・
思いが・・・強いゆえに
エリシアには
監視されている恐怖の存在として
定着してしまったからだ。
クスリに手を出したのもそのせいだ
ザックは愕然として、膝から崩れた
「運命は変えられなかった
しかも、父親はマークなのか?」
スーツの男は
「いや、変えたさ その結果が
良いか悪いかではなく、だがね
君は勘がいいな
父親はマークだ 間違いない
今いる時代の3年後にエリシアとは
出会うことになる」
ザックが今 問題としている男
「アイツはどうなる?
カイル・・・カイルは?」
スーツの男は深く息をすると
謎に迫るような話を始めた
「彼は、私が過去に手がけた人物だ
ただ、マークとエリシアが出会う前に
戻りたいという理由だけで・・・」
「母に惚れていたのか?」
「まぁ、そうだろうな
しかし、未来に起こることも
カイルは知っているよ私が話した
彼もまた、人の命を奪う為に
時代をさかのぼった。」
エリシアは確かに
クスリに手を出したが
若い頃には 酷く依存してなかったようだ
売人の所へ来るときに
カイルが一目惚れし
仲良くなり、カイルはエリシアを
守りたいと思ったようだ
だが、エリシアはそんなこと
お構いなしにマークと出会い
ザックを身ごもりさっさと
家庭を築いてしまった。
ザックはとんでもない思い違いを
してしまっていた。
そんな昔から
タイムスリップが存在していたとは
思いもよらなかったし
カイルがエリシアを守護していたなど
考えもしなかったのだ
「私は時の審判を下すもの」
スーツの男はそれだけ言うと
居なくなってしまった。
ザックは気持ちを改め
タイムスリップしてしまったことは
仕方がないし戻れないなら
両親とカイル
人生をかけて守りたいと誓った。
もちろん
自身が生まれる前に来た訳で
自身の誕生さえも
目の当たりにしながら・・・
ザック編を
最後までお読みくださり
ありがとうございます
タイムスリップをして
家族を守ると決めた彼は
後悔はしていない。
思わぬ結果が待ち受けていた過去は
自身が招いた災いだったが
少し離れたところから
見守って過ごしているようだ
ハッピーエンドかどうかは読んだ方次第です
戻ってこられないタイムスリップ
色々と考えさせられます