1ー2 ザック編 記憶の中で
ザックはエリシアの家を離れ
一人、町を歩いていた。
飲み屋に入り
隅の席を陣取ると
ボトルで酒を頼み
ブツブツと独り言を話し始めた。
カイルが父親だったのは
薄々、気がついていたかもしれないな
今までの自分の生い立ちを
思い起こしてみた。
マークという父親は
自分を叱ることをしたことが無い
カイルと過ごすエリシアを見て
何もかも理解出来た気がした
現代にいた頃のカイルは
それはヒドい男だった
ザックが学生の頃
大ゲンカして以来、ほとんど
顔を見ることは無くなっていたが
酒に溺れ、クスリに手を出し
嘘をついてはマークとエリシアに
金を借りに来ていた。
見るに見かねたザックが
殴ってしまったのだ。
しかし、それから何年かして
エリシアの様子がおかしくなった
極端に外出を怖がり
部屋中のカーテンを閉めきり
引きこもりがちになった
そしてザックが
タイムスリップする少し前に
エリシアは亡くなった。
父親には愛情を感じなかったが
母親には溢れんばかりの愛情を
ザックは注いでいた。
エリシアの具合が悪くても
マークは無関心で
病院からの薬も取りに行くのは
ザックに押し付けていた。
エリシアが危篤の際、ザックは
泣きながら覚悟を決めていた
こんなことになるなら
マークと知り合わない世界で
エリシアを生かしたいと。
その後、ジャンの存在を知り
タイムスリップしようと思ったようだ。
しかし、事態は新たな展開になり
マークだけの責任ではないことを
エリシアの家で確認したのだ。
マークとは出会わない人生に
変えることには成功したが
問題はカイルだ
エリシアが死に至ったのは
恐らく、カイルのせいなんだ
「カイルの野郎・・クスリやらせたな」
ザックは拳を握りしめた。
エリシアの仇を取り
自身も消えてしまうつもりらしい。
カイルをどうにかしたところで
捕まることはない訳だ。
あまり、賛成出来る内容ではないが
カイルを恨む気持ちが
ザックを支配していった。