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4話

火曜日。

朝起きてみるとすっごく良い天気!

澄み渡る青い空を見上げ、今日も一日頑張ろうと気合を入れる。

洗濯を済ませ、朝ごはんを食べていると、不思議な事にいつも食べる量を過ぎてもいくらでもお腹の中に入っていく。

どうしたんだろ、遅めの成長期でも来たのかな? 僕はエリカと同じ位の身長だからそうだったら嬉しいな。

などと思っているといつの間にか登校時間になった。


「エリカおはよう」

「おはよう昴」


いつもの待ち合わせ場所に向かうとエリカが先に着いており、笑顔で向かえてくれる。


「あれ、ダンは?」

「また寝坊でしょ」


ダンはよく寝坊をする。

最近は直ってきてたんだけど、きっと昨日あの後遅くまで起きてたんだろうなぁ……

仕方ないので先に学校に向かう事に。

エリカと二人ならんで通学路を歩いている、穏やかな時間が心地良い。

そういえばエリカと出会って何年たったのだろうか。

確か初めて会ったのが幼稚園の入園式だったから……


「ねぇ昴。昴と私が出会った時の事覚えてる?」

「うん、覚えてるよ。僕も今、エリカと出会って何年たったのか思い出してたんだ」

「そ、そっか……。同じだね……」

「ダンがすっげぇ可愛い子がいるってはしゃいでたから懐かしいなぁ。でも、どうして僕達って仲良くなったんだっけ?入園してしばらくしてからだったよね?」

「何でって、同じ組の男子にスカートめくりとかされて虐められてた私を昴が助けてくれたからじゃない。泣いてた私を庇うように立って『やめろ!』って。どんなに殴られてもやり返さずに、ぼろぼろになっても立ち上がって」

「ええっ?そんな事あったっけ?」

「あったわよ。……その時の昴を見て、私、本に書いてある英雄みたいだなって思ったの。すっごく格好良かったわ。それからね、私達が仲良くなったのは」


そんな事があったんだ……

恥ずかしながら全然覚えてなかった。


「そういえば私が癒しのスキルが発現したのも、いつも誰かを守ろうとしてぼろぼろになっちゃう昴を助けたいって思ったのがきっかけね」

「エリカのスキル発現にそんな理由があったんだ。……昔から頼りなくてごめんよ」

「ううん、そんな事ない。私の英雄は、昔からずっと昴よ」


桜の花びらが風に吹かれ舞い散る中、頬を染めながら微笑んだエリカは、その、凄く綺麗だった。


☆☆☆


暫くエリカと二人並んで歩き、学校の校門の前に着いた時にようやくダンが僕たちに追い付いてきた。


「オッス! いや〜あぶねあぶね。また遅刻するとこだったぜ」


三人で校門をくぐると小高い坂が見えてくる。

僕たちが通う阿武隈高校は町を見渡せる見晴らしの良い丘の上にあるから、毎日この坂を登り下りをしなくちゃいけないんだ。

だから大半の生徒からは朝から特訓かよと不満が上がっていたりする。

少し汗を掻きながらも登りきり、学校に到着。

坂のすぐ近くにあるグラウンドを覗くと、野球部が朝練をしていて、マウンドでは幼稚園からの幼なじみの同級生のエースで四番のエルフの山田君がスキルを駆使した魔球を投げていた。球がグネングネン動いてるし。相変わらず凄いなぁ。


「おーーい!エリカちゃーん!!おはよーー!ついでに昴とダンも!」


山田君も僕達を見つけて大きな声で挨拶してくれた。

今日知ったんだけど、どうやら幼稚園の頃、エリカのスカートめくりなどをしていた子供達の中に山田君がいたみたい。

僕達は挨拶を返してクラスに向かった。


☆☆☆


「おはようございます」

「はよ〜」

「おはよー」


クラスに着いて皆から挨拶の言葉を掛けられる。

クラス内はいつも通り賑やかなんだけど、どうやら皆が今日話題に出しているのは、昨日のランク測定についてのようだ。

その中でも特に話題になっているのは、エドワルド様についてで、やっぱり皆、衝撃的だったみたい。

その偉業の数々、強さはとても有名なのに大部分が謎だった英雄があんなに気さくな方だったなんてびっくりだよね。

エドワード・エドワルド様

出自、生い立ちは一切謎だが、その名は全世界に伝わっていて、歴史的な本から小さな子供が読む絵本まで幅広く英雄として描かれている。

数々の武勇伝を持ち、約200年前の世界融合以降続いていた天族、悪魔族、妖魔族、人間族の戦争を終わらせたのもエドワルド様だ。

それだけでも凄いのだけれど、エドワルド様が全世界に名を広めたのはやはり、たった一人で八王の一角『廻世老王』と戦いそして撃退したという凄まじい功績だろう。

そんな英雄が自分達の前に現れたんだ。一日経った今でも皆気持ちが高揚してるのかも。もちろん僕は興奮してます。

だからクラスの皆が同じ話題で盛り上がっているのが嬉しい。

ランク測定の事は今はノーカンで話に混ざろうとしたら、ちょうど扉が開き先生がやって来た。

残念……。

僕の席の隣にエリカが、後ろにダンが座り、担任の安西先生が出張のため代わりの男の先生がHRを進めていく。


「今日は一時限目は体育でしたがエドワルド様からの御達しにより、八王についての授業を行います」


「なんでわざわざ今更話すんだろうな? 八王なんて誰でも知ってるっつーのに」


そうだよね。なんで今更なんだろ?


「皆さん勿論知っていると思いますが、八王とは世界融合以降確認されている災厄ですね。文字通り世界災厄とも呼ばれている、たった一体で世界を滅亡させる事が出来る力を持った化物。……ああいや失礼。人類を守護して下さっている【救世審王】ハルシュールシュ様は例外ですが。しかしそれ以外、つまり【廻世老王】【現世死王】【浄世滅王】【愛世病王】【生世命王】【想世戯王】【楽世痴王】なる王は世界の生命全ての敵です」


八王。

その名は世界中に知れ渡っている。

それこそ地震や台風や雷の様に災害・災厄として。


「ですが八王は滅多に姿を見せませんし、姿を見た者はほぼ全て八王により命を落とします。その様な存在が何故こうも世に知れ渡っているのか。それは【救世審王】と共にこの日本にて人類を守護して下さっている帝様一族のお力によるものです。八王がいつ何処で出現するのかを知る事が出来る。その為八王による被害を最小限にとどめる事が出来ており、またその情報を世界に伝えることによりこの日本の世界的な地位も確固たるものにしました」


それも勿論この日本に住む人にとっては当たり前の情報だ。帝様は世界融合より前の時代から日本を統治している一族で……ってなんで僕はさっきから誰かに説明してるみたいなんだ?


『オニイチャンモットモット』

「えっ!?」

「どうかしましたか?睦月くん?」


びっくりして立ち上がってしまった僕に先生が声をかけてくる。

周りを見渡すがやはり何もない。


「あ、いえ、何でもないです。すみません……」

「昴大丈夫か? 昨日の帰りも何だか変だったしよ?」

「大丈夫だよ、ありがとうダン。ただ……声が聞こえて」

「声?」

「うん。昨日からお兄ちゃんって呼ぶ女の子の声が」

「……何よそれ。昨日のどこの馬の骨だかわからない女に続いて昴のアホ!」

「……ごほん。話を続けますが良いですか?」


先生がこちらを向きながら聞いてくる。


「「「す、すみません」」」


「それでは話を続けましょうか。八王の出現は帝様のおかげで避難することができます。ですが逃げ遅れたり、なんらかのアクシデントで八王の出現場所に居てしまい助かった人の証言によると八王が現れる際にキィーンとガラスを引っ掻いたような不快な音が約5キロ先まで聞こえるようです」


とその時丁度、僕たちの耳には

キィーンキィーンキィーンと音が鳴り響いた。


「そう。この様な音ですね。……えっ?」

「な、なあ…あれ何だ?」


窓側に座るエルフの山田君が空を見上げながら呟く。

クラスの全員が窓際に行き空を見上げると、空は、何か取り返しの付かないようにひび割れていて、航さんの店があるなかよし商店街がある丁度真上ぐらいに、商店街がすっぽり収まるぐらい大きな黒いナマコみたいな何かがふよふよ浮いていた。


「昴……逃げて。あれはヤバイ」


黒いナマコをみたエリカが声を震わせながら僕を見る。


「あ」


それは誰の声だったのだろう。

ドスン

と、ふよふよと浮いていた黒いナマコが地面に落ちた。


「え…?あれ?あそこ航さんが居る」


瞬間とてつもない爆発音がナマコの下から巻き起こった。


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