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味噌汁のお味は?

 アンジェリークの1日は朝食作りから始まることとなった。

 と言っても、ほとんどは料理長たち使用人の仕事なので、味噌汁またはお吸い物だけがアンジェリークの仕事である。


 汁物は各家に伝わる味がある。


 味噌は赤味噌、白味噌、会わせ味噌等各種あり、出汁も鰹だし、いりこだし、昆布だし等種類が複数ある。


 そして、そのそれぞれが産出される地域によって、もしくは削りかたによってなど、様々な条件で微妙な違いをだし、料亭などでは汁物専門の料理人を置いているところもあるぐらい、奥の深い一品なのだそうだ。


 味噌も出汁をとるものも、もちろん店で買うことができ、中には、出汁入り味噌なるずぼらな人には嬉しい便利なものもあるし、溶かさず使える液体味噌もある。


 もちろん、そのまま使えるわけだが、これらを掛け合わせて各家庭の味を出すことも多い。

 各家庭の秘伝の割合だの、温度だので 、いろいろ違いが出るらしい。

 所謂お袋の味である。

 まだ、アンジェリークには子どもはいないが。


 ほとんどの人は所謂目分量で作り、軽量スプーンだの軽量カップだのは使わない。


 教える方も普段何カップの出汁に何グラムの味噌をだなんてしているわけではないので、「こんなもんね。」で終わりである。



 これでどうやって同じものを明日から作れと?


 普通無理でしょ。と昨日義母からレクチャーを受けたアンジェリークは頭を抱えるが、気をとりなおして挑む。


 義母から伝授された味はなかなか一定にはならない。(当たり前だ)

 アンジェリークからすれば昨日と同じ味と思っても、わかる人にはわかる微妙な違いがあるらしいのだ。


 合格点をもらえるだろうかと不安になりつつも、味見した感じでは中々だと密かに自信を持ち、後の配膳を使用人たちに任せ、身だしなみを整えて食堂へ向かう。


 そこにはすでに義父と旦那様が座って今日の新聞を読んでいる。

 義母はぼうっとした顔で黙って座っている。まだ眠いのかな?そういえば低血圧とか言ってたな。


 そこに「おはようございます。」と声をかけて入り席につく。それを見た使用人たちがいつものように食事を並べていく。


 メニューはこの国独特の、白い米を炊いたもの、私が作った味噌汁、香の物、卵に出汁を混ぜ焼いたもの、焼き魚、海苔等、どんどん用意されていく。


 卵や魚は時々違うものと変わるが、白いご飯 、汁物、香の物、海苔はほぼ毎日当然のように用意される。


 初めての朝、アンジェリークは朝からこのようなお腹にたまるものを食するのに抵抗があった。


 しかし、慣れてくると、朝からパンにバターを塗ったり、油いっぱいの焼いたベーコンを食べるよりも、お腹はいっぱいになるのに、さほど苦しくはならないこのメニューを気に入っている。


 今日の味噌汁は、豆腐とわかめの味噌汁で、これはもちろん先ほどアンジェリークが作ったものである。


 豆腐を切るとき、まな板の上ではなく手のひらの上で切るのだと言われ、真っ青になったアンジェリークだったが、幸い手のひらも豆腐も赤く染まることにはならずにすんだ。


 びびった~勘弁してよ~。

 でも賽の目に切れたときには、心のなかでガッツポーズしちゃったわよ。


 皆がこれを飲む時の表情、これがアンジェリークにはテストのようでドキドキする 。



 どうであろうか。



 そっと皆の顔を見ていると、旦那様は満足げに微笑み、義父は無表情で椀を見つめ、義母は微かにくいっと片眉を上げる。



 ??? わ、わかりにくい!



 三者三様だが誰も言葉を発しない、しかし残しもしない。



 結局どうなのか?



 夜寝る前に旦那様がおっしゃいました。


 「アンジェリーク、今朝のお味噌汁、とっても美味しかったよ。我が家の新商品だね。」



 へっ?



 つまり、味噌汁としては美味しかったけど、お袋の味としては不合格ということか?


 ニコニコ微笑む旦那様を前に、頬がひきつるアンジェリークだった。



 ま、負けないもん!!

 明日はリベンジだ~!



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