サクヤとトシゾーの人生双六 第四弾〈華も嵐も乗り越えて〉試作品改訂版 《ヒジカタ家にて》
ヒジカタ家のある日の昼下がり。
跡取り息子の大きな声が響く。
「来たぜ!改訂版!」
「騒がしいわね。何の改訂版よ。」
「『サクヤとトシゾーの人生双六 第四弾〈華も嵐も乗り越えて〉試作品』の改訂版だよ。」
「ああ、以前あまりにくだらなくて没ったやつね。」
「うるせー。ごちゃごちゃ言ってないでやるぞ。」
「はいはい。お父さん忙しそうだからお爺ちゃん呼んでくるわ。」
「んじゃ、もう一人。手代の誰か暇そうな奴~。おっ、ソージ、おめえ入れや。」
「はい?若旦さん、何を?私、仕事がありますが。」
「どうせ大したことやってねえだろうよ。おら、入れや。」
「お爺ちゃん来たわよ。あら、ソージが入るのね。」
「いや、私は......仕事が......。」
「ほれ、やるぞ!」
と言うわけで、トシゾー、トシゾーの母のエツコ、トシゾーの祖父カツゾー、そして手代のソージの四人で双六をすることになった。
先ずはトシゾーから。
コロコロコロ。
「よっ、よっと。何々、反物を仕入れる。あ~、まあ最初は仕方ねえよな。」
次はエツコ。
コロコロコロ。
「花嫁学校に入学。何この学校。男だったら花婿学校とかあるのかしらね?しかも、入学金高っ!」
「はっはっはっ。本当にあったら良いのう。わしは......。」
コロコロコロ。
「実家に食費を渡す。リアルじゃのう......。」
「では私が。」
コロコロコロ。
「宝くじで大当り五十万キン。ふふふ。」
「くそっ。俺も。彼女に紅茶をかけられクリーニング代、千キン払う。はあ?貰うんじゃねえのかよ!弁償しろや!」
「紅茶を『こぼされ』なら弁償でしょうけど、『かけられ』たんでしょ。あんたが二股でもしたんじゃないの。」
「リアルじゃのう......。」
「......。」
「う、うるせー。で、母さん何だったんだよ。」
「ああ、私は雑誌の読者モデルで五万キンの報酬よ。うふっ。」
「『老後の友』とか?」
ボコッ!
「わしもじゃ。読者モデルで五万キンじゃ。」
「嫁と舅で『老後の友』を飾んのかよ。」
ボコッ!ボコッ!
「え~、私いきま~す。えっと、脱ぎたてホヤホヤの褌を売って......十万キン!」
イソイソ。
「脱いでんじゃねぇよ!」
「あら、可愛いお尻ね。」
「見てんじゃねぇよ!」
「すべすべじゃのう。」
「触ってんじゃねぇよ!」
「あふん。」
「感じてんじゃねぇよ!はぁはぁ、突っ込み疲れたわ!」
「でも、こういうのは止めたんじゃないの?」
「いや、サクヤがパンツは駄目って言うから代わりに......。」
「褌も下着でしょうが!」
「おなごの褌......ありじゃのう。」
「私だって負けてませんよ!」
「......悪ぃ。俺が悪かったよ。褌は無しだよ。下着売んのは諦めるぜ。」
「悲愴な顔してんじゃないわよ!」
「若いのう。」
「若いですね。」
「てめえが言うんじゃねえよ!俺より年下だろうがよ!ああ、もう、次いくぞ!」
コロコロコロ。
「商品を売って八万キン。よし、反物が捌けたな。」
「私は恋人から指輪を貰う。八十万キン......。ああ、夫がいるのに、私ったら罪な女ね。」
「嫁の浮気を見て見ぬふりをする、心広き舅でよかったのう。おっ、わしも恋人から指輪を貰う。八十万キン。婆さんすまんのう、はっはっはっ。」
「大旦那さん、奥様のストーカー......?あ、いえいえ、何でもありません。えっと私は......恋人に指輪を贈る、八十万キン......。」
「「ありがとう!」」
「てめえ、フケ専だったのかよ。よし、俺は......競馬で十万キンの損......俺は賭け事なんてしねえよ!」
「相変わらず運の悪い子ねぇ。私はメイド喫茶でバイト。日給七千キン。」
「メイド喫茶には年齢制限ないのかのう。」
ボコッ!
「わ、わしは、か、株で五十万キンのも、儲け......う、うう。」
「大旦那さん、しっかり!傷は浅うございますよ!え~、私は金平糖を買いだめして三万キンの出費。」
「どんだけ食うんだよ!俺は......。」
「何よ、どうしたのよ。」
「ほうほう、お前も褌売るんかい。」
「え~、私の方が若いのに値段一緒なんて!」
「で、あんたは脱がないの?」
「「脱~げ!脱~げ!」」
「実演双六じゃねえよ!あ~、もう、ヤメヤメ!こいつもやり直しだ!」
サクヤとトシゾーの人生双六 第四弾、いつになったら発売されるのやら......乞うご期待?




