カキノウチ家とは
カキノウチ家は義父ヨシタカと義母レイコ、夫のサクヤ、そして私の4人家族だ。
と、いっても料理人をはじめ何人かの住み込みの使用人が共に住んでいる。 料理長とメイド長は夫婦だ。 子どもはまだおらず、子供ができたら独立する予定らしい。
隣町にはお義父様の姉夫婦と息子が支店を出し住んでいる。 旦那様は一人っ子なので、この従兄弟とは兄弟のように仲が良いとか。旦那様が年下なので弟役?
他にもヤポナ国内にはもちろん、国外にも多数の支店を持つ。 さすが大商人。
意外なことに屋敷はさほど大きく豪勢なものではないのだが、義母曰く、
「いくつも部屋を余らせてもねぇ。使用人にいらぬ負担がかかるだけだし、庭も広すぎたら手入れが大変でしょ。庭師だってしんどいのは嫌でしょう。せっかく手入れしても、広すぎたら全部見てもらえないし。意味ないわ。」
元貴族令嬢とは思えぬお言葉。
その通りだとは思うけど、私のような、貴族とは名ばかりの貧乏領主の娘ならともかく高位貴族だった義母が言うのは何やら違和感が。
義父が言うには、義母は見た目は貴族、中身は庶民なんだそうな。 でも、そのギャップがいいんだよ~とにやける義父。
はいはい、ごちそうさま... ...。
義父こそ、見た目は渋い一筋縄ではいかないやり手風なのに、口を開くと義母の話ばっかり。
もうお腹いっぱい胸いっぱい。やり手なのは確かなんだろうけど... ...残念イケメン枠ですね。ふぅ~。
旦那様は見事にお二人を足して2で割ったような人。 見た目は義父に似た、二重の涼やかな目元に、スッとした鼻梁。少し薄い口元にしゅっとした顎筋。 義父よりは少し甘めの雰囲気は義母に似ている。 髪の毛も義母に似て、軽くウェーブがかっており、それが甘さを感じさせるのかもしれない。
相手に警戒を感じさせない商人としては合格点の容貌だそうだ。
ならば、商人として不合格な容貌ってなんだ?
それって商人としてやっていけないのでは?
商人ってイケメン揃いなのか?
少なくともオランシアではイケメンじゃない商人の方が多かったような。(なんて失礼)
聞いてみたらニヤリと笑われた。
いや、笑われてもわかりませんから。
私そこまで察するのは無理ですから... ...。
さあ、これからはこの人たちが私の家族。父や馴染みの使用人たちと離れたのは、寂しいし不安ではあるけれど、幸い怖そうな人はいないようで、ちょっと、ほっ。
嫁姑戦争なんて嫌ですものね。
仲良きことは美しき哉ですわね。
ところで、義父が商会の主であるのはわかる。
旦那様は義父の跡継ぎとして、手伝いながら経験を積んでいるのもわかる。
驚いたのは、義母も経理担当で働いてること。 元貴族令嬢ということで働くなんてとんでもないと思いきや、バリバリの経理士だそうで。
では私は何をすれば?
専業主婦といっても家の中のことは使用人がほとんどのことはしてくれるし働いたことないし。 う~んと悩んでいたら、義母から指令を受けました。
あなたの仕事は我が家代々のなくてはならないとっても大事な仕事よ。と言うので緊張して拝聴したら... ...
「味噌汁係よ、頑張ってね!」
なんじゃ、そりゃ?
「アンジェリーク、ファイト!」
... ...応援ありがとう、旦那様。
でも何をどう頑張れと?




