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第52話 申し開き

 取り敢えず会話の方向性と言うかそんな感じのモノは何となくふんわりと理解した。


「オーケー。取り敢えず何とか説明し直してみよう」

「気を付けてくれよ?」

「前向きに善処しよう。

 さて……待たせたな」


 振り返り、暇を持て余して不貞腐れていたシャルビーの方を向く。

 不機嫌を隠そうともしない視線が俺にぶつけられた。


「待たせ過ぎだぞ。そんなに馬鹿おれ相手に説明するのが難しいのか?」

「そうじゃない。専門用語について色々と教えて貰っててな。理解するのが大変なんだ」

「その手の単語は認識を共有しておかないと話が拗れるもとなんでな。つい長話しちまった。待たせてスマンな」


 ガリウスが俺に巻き付けていた腕を解きながらフォローを入れてくれる。それでシャルビーも渋々納得してくれた様だ。

 続けろと言わんばかりに顎を振りやがるシャルビーに話し始める。


「まず、工場区画に向かって逃げた俺達は、この辺り――と、焼け焦げたレールしか残っていない工場入り口を指差しつつ――で反撃を開始した。

 ペトーは反転してお前の居た倉庫の方へ戻り、俺は工場こっちに逃げ込もうとして落とし穴に落ちたんだが――」

「ちょっと待て。

 落とし穴なんて何処にあるんだよ?」

「――それは俺が聞きたい。この島じゃ道のど真ん中にボツ・シュートを作る風習でもあるのか?」

「んな風習もん、ある訳無ぇだろ!」


 あの時を思い出して声に疲れだか呆れだかが混じってしまった俺の質問に、何故かシャルビーが逆切れして答える。あいつはあいつで、かなり追い詰められ(テンパっ)ているのかもしれない。

 シャルビーの様子を見て、ガリウスが俺とシャルビーと正三角形を作る位置――一辺は1メートルもなさそうだが――にどっかりと腰を下ろし、宥めに回る。


「まあまあ、そんなに怒鳴るなよ。

 サーウッド(こいつ)が落とし穴に落ちたのは俺も見ている。間違いない。

 お前さんだって、この施設の全てを知ってる訳じゃないんだろ?」

「ま、まあ……そりゃあ、そうだけどよ……」

「じゃあ、取り敢えず続きを聞いてみようぜ?」


 ガリウスの視線に促されて、俺は説明を再開した。


「兎に角、落とし穴に落っこちて辿り着いた先が真っ暗な倉庫みたいな所でな」

「んな地下倉庫、聞いた事無ぇぞ」

「俺だって知らんよ。もしかすると人には表立って言えない、後ろ暗い物を扱ってたんじゃないのか? 秘密裏に」

「その可能性は、無くはないだろうが低いだろうな。

 で、その倉庫には何があったんだ?」


 ガリウスがフォローを入れてくれるお陰でシャルビーの突っ込みを躱せているんだが、あいつもかなり疑心暗鬼になってるな。話の腰を折られてばかりで先に進め難い。

 まあ、仕方ない。あいつの態度の原因は俺にある……不可抗力だと反論したいけど、我慢我慢。


「あ、ああ……箱みたいな物を積み上げた柱が一定の間隔で並んでたな」

「中身は?」

「調べなかった。一見したところでは開きそうじゃなかったんでな」

「どうせなら調べとけよ」

「そうだったな。あの時は脱出する事しか考えられなくて、そんな余裕が無かったんだ」

「……仕方ねぇなぁ」


 何だよ、その「やれやれだぜ」って表情は。俺はRPGのマップを一歩一歩「調べる」を実行しながら進められる程、気長じゃないんだ。思わず唇を尖らせてしまった。

 同意を得ようとガリウスを見ると、こちらは残念な子を生暖かく鑑賞している最中だった様だ。こりゃまた失礼……いや、だからそんな目で見るんじゃない!


「……まあ良い。

 それで、その倉庫を歩き回っていたら、そこの管理人みたいな奴に襲い掛かられたんだ」

「どんな奴だった?

 名前は?」

「名前は……聞いてる余裕が無かったな。後は真っ黄色のド派手なスーツを着ていたって位しか判らん」

「そんな目立った服を着る様な奴、この島に居たっけかなぁ……?」

「あいつが胸ポケットからスタンガンでも出す様なら、こっちも巨大ロボを呼び出せたんだがなぁ」

「? ……お前、何言ってんだ?」

「あー……今時、そのネタは誰にも通じないぞ?」


 二人から連続(ツープラトン)で突っ込まれてしまった。

 正直スマンかった、シャルビー。だが、通じないかもしれない話題ネタを、それでも敢えて話す。自由とはそう言う事なんだよ。

 そして少なくともあんたには通じたよな、ガリウス?


「フリーダム過ぎるぜ、サーウッド?」

「スマンスマン。

 話を元に戻すが、その管理人っぽい奴を何とか撃退したと思ったら、何時の間にかここへやって来ていたって訳だ」


 ガリウスの指摘にふざけ過ぎた事を謝り、俺は残りの話を可能な限りコンパクトに纏めて落ちを付けた。

 話し終わった俺に対し、シャルビーは半信半疑の眼差しを向け、ガリウスは何やら考え込んでいる風を装っている。


「それじゃ手前ぇは、その管理人ってのが工場ここを爆破したって言うのか?」

「ああ、多分な」

「自分の組織の工場を爆破したってのか?」

「他に心当たりが無い。

 ついでに言えば、あいつなら、それくらいやりそうだった」

「そ、そんなにヤバい奴だったのか?」

「うむ。正に狂犬と形容するしかない変態だった」


 俺が断言すると、シャルビーのこめかみが引き攣った。どうせ俺が非武装の工場関係者を脅して爆破したくらいに考えていたんだろう。残念だったな。今回の相手はガチのド変態だったんだよ!

 と、ここまで自己正当化に成功したところで、俺はとある矛盾に気が付いた。


「……なあ、シャルビー」

「ん? どうした?」

「俺達がここへ侵入して出会った時、お前は『工場は24時間体制で稼働している』って言ったよな?」

「え?」

「だがさっき、お前は『夜勤はやってなかったし』と言ったな?」

「あ? ああ、言ったぜ?」


 最初は不思議そうだったシャルビーの表情が、俺の質問の意図に気付くとにやけた笑いへと変わった。

 こいつ、何を企んでる?


「ああ、その話かぁ。今夜の工場の夜勤は休みだぜ」

「何だと?」

「幾ら忙しくても休みを挟まないと人間も機械もぶっ壊れちまうからな」

「待て! お前、あの時24時間体制で――」

「俺は言ってねぇぜ?

 『24時間』って言ったのは、あんたのお仲間だ。俺は『注文が引っ切り無しで忙しい』としか言ってないんだなぁ、これが」


 こんの野郎……


「図ったなシャルビー!?」

「勘違いするおまえが悪いのさ」

「ま、その件についちゃあ俺達も一枚噛んでててな」


 静かだったガリウスが急に口を開いた。一枚噛んで……とは、どういう事だ?

 睨み付ける俺を余裕綽々で眺めながら、シャルビーが答えを教えてくれる。


自警団このひとたちの発案なんだよ。誰も居ない工場の灯りを点けっぱなしにしとくのは」

「何でまた、そんな事を……?」

「警備を一箇所に纏める為さ。

 人が居る上に未完成品しか置いてない工場と、真っ暗で誰も居ない完成品が保管してある倉庫。お前さんならどっちに狙いを付ける?」

「そりゃ倉庫だ……なるほど、そう言う事か」

「そう言う事さ。警備してくれてる奴等にも口裏を合わせて貰ってる。

 一応、工場の方にも若干名は配置していたんだけどな」


 どうやら俺とペトーは文字通り「飛んで火に入る夏の虫」だった訳だ。

 色々考えてたんだな、警備のPC達(やつら)も。


「そう言えば、うちの相棒はどうなったか知ってるか?

 後、倉庫の方に爆発の被害は無かったのか?」

「倉庫の方、か……」


 俺の質問にガリウスは顎を一撫でして腕を組んだ。何かを思い出す様に目を閉じ、すぐに開く。


「俺の聞いている範囲だと、倉庫側では爆発は起きなかったそうだ」

「あの猫耳のガキがエンジン3基をかっぱらって逃げやがったせいで屋根に穴が開いたとか他のエンジンが傷物になったとか、せいぜいその程度だな」

航空機あしのある奴等が追い掛けちゃいるが、今のところ捕まえたとも撃墜したとも報告は無いな」

「あー……何と言うか、ご迷惑をお掛けしました」


 シャルビーの厭味ったらしい補足に、思わず頭を下げてしまった。

 ともあれ、エンジン3基とは大収穫である。このまま俺も逃げ切れれば完璧、だ……が――


「――なあ、ガリウス。

 あんた、何でここに埋まってたんだ?」

「そりゃあ俺が工場区画の警備を担当していたからだな」

「じゃあ、どうして、倉庫の状況を、そんなに詳しく知ってるんだ?」

「そりゃあ――」


 ガリウスが右手を持ち上げると、周囲の瓦礫の中から三人、そいつ等と俺達を纏めて囲む様に20人程、人影が現れた。

 どうやら情報交換ムダばなしをしている間に包囲されてしまったらしい。


「――倉庫を警備していた仲間達からさ」


 奴の浮かべる暑苦しくも爽やかなアメコミっぽい笑顔が眩し過ぎる。

 俺は拡張能力を起動してペトーの現況を確認した。視界の中に表示されているチームメンバーのステータスで無事なのは確認出来ているが、追っ手からの逃亡に成功しているのかまでは判らない。

 頭の中を駆け回る鈍痛を無視しつつペトーの現在位置を調べると、この島から南南西2千4百キロメートルの辺りで追っ手を置いてけぼりにして、現在は4百キロメートル付近で速度を増しながらこの島を目指していた。

 大体、後1分ってくらいか。

 確認が取れたところで俺は出来るだけ渋々と両手を頭の上に挙げ(ホールドアップし)た。


「やれやれ。

 全く、上手く引っ掛けられたもんだ」

「賞金首のわりに隙が多過ぎるんだよ、お前さん」

「こっちは元々善良な一市民なんだ。そう簡単にはアウトロー生活に馴染めないんだよ」

「何処が善良だよ。良く言うぜ」

「まあ、これから頑張って慣れる事だ。

 次があれば、だがな」


 俺の言い草に呆れているシャルビーと勝った気でいるガリウスが、油断する事無く銃を構えながら近付いて来た。

 俺は、ふと疑問に思った事を聞いてみる。


「そう言えば、この島って滑走路は無かったと思ったんだが、どうやって飛行機を持ち込んだんだ?」

「垂直離着陸機さ。一部の奴らは水上離着陸機だったがね」

「ふむ。なるほど、その手があったか」

「細かい事気にするんだな、あんたは」

「好奇心は大事だぜ?

 ああ、ついでに後もう一つ」

「お前さん、ロス市警の警部かよ……って、何を待ってる?」


 おっとガリウスが感付いたか。さて、ここから後30秒程、どうやって引っ張るか……。

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