(3)
「それで次はどこに向かうんだ? 自分にはこの世界のことが分からないんだが……」
この世界の住人であり、先頭を歩いていたシュウを見つめるサクヤ。
シュウはハッとした表情をして、視線をおそるおそるサクヤから逸らす。数秒後、再度サクヤへと視線を向けると、シュウの内心を読み取ったサクヤの冷たい視線がシュウへと突き刺さる。
「あ、あはは……分かりません」
「素直でよろしい。おい、クサビ」
そう話を振るとクサビはため息を吐きながら、サクヤに近寄り、遠慮なく引っ叩く。スパンと軽快な音が響き渡り、その直後にサクヤの痛がる声が響き渡る。
「な、何をっ!」
「地図を持っていないサクヤがそれを偉そうに言えますか? せめて、自分が準備をしてから文句を言うべきでしょう」
「うっ……」
言葉に詰まるサクヤを余所に袖の中から一枚の護符を取り出し、それで分厚い本を呼び出す。
表紙には『MAP』と表記されていた。
「あれ、それどうしたの?」
「これは書店に置いてあったものをコピーした物ですわ。あ、『泥棒』とか言わないでくださいね。魔王なのですから欲しい物は手に入れませんと」
「う、うん。そうだね。これに助けられるしね」
言おうとしていた言葉を先読みされ、さらには釘を打たれてしまったシュウは同調する意見しか言うことしか出来なかった。
「実際はお金がなかったから、そうすることしか出来なかっただけだよ。ちょっと心苦しそうにコピーしてたくせに」
と、シュウを庇うようにアラベラがサクヤへと意地悪く言い放つ。
クサビもまた「うっ」とした表情を浮かべつつ、ペラペラと地図を捲り、大体の現在地点を探し始める。しかし、適当に歩いてきたため、詳しい現在地点を知ることが出来なかった。それをカバーするようにアラベラが魔法を使い、地図に赤い点を付け、詳しい現在地点を把握した。
「ありがとうございますわ。この地点から考えると……近い場所はここですわね」
クサビが指し示した場所は『アルハイム』という町だった。
地上の表記ではモネラやニモネラに比べて、何倍も広く、ある程度の物ならば簡単に手に入りそうなほど大きめの町。
「じゃあ、そこを目指すか!」
サクヤはそう言って、アルハイムを指差すように腕を上げる。
「そうですね」
「うん、行こ行こっ!」
「あ、あれ?」
クサビとアラベラは同意しつつもサクヤの指差した方向ではなく、完全に真逆の方向へ歩き始める。
シュウはアラベラに手を握られていたため、強制的に二人の方向へ歩かされていた。
「……」
サクヤはその後をしばらく固まっていた後、慌てて三人の後を追いかける。
こうして、未熟な勇者見習いと仲間が三人の魔王という奇妙なパーティの旅が始まった。




