(22) 【サクヤ視点】
「とにかく、この刃たちは邪魔だな。撤去させてもらうぞ」
サクヤは長刀を鞘に納めながら、鬼面へと断言した。
「い、いったいどうやって撤去するつもりだ! その刀までも鞘に納めて、何の攻撃が出来る! 拙者が能力の解除をすると思ったら――」
そこで鬼面の言葉は途切れさせられる。
なぜなら、鬼面の疑問を解決するかのように、空中・地面関係なしに無数の刀剣が出現し、鬼面が展開した刃をあっさりと斬り折ったからである。もちろん、さっきサクヤが長刀で目の前の刃を斬り折ったような音が周囲に連続として響き渡った。しかも、それを見せつけるかのように鬼面の身体だけを傷つけないように、刀剣を透かしていた。
その刀剣は目標物を斬り折った後、ある程度の距離を進むと水の中に沈むように波紋を呼び、空間に飲み込まれて姿を消す。
「どうだ? お前の上位互換的な能力は?」
「くっ、お、のれ!」
「いいぞ。ほら、もっかい展開して見せろ。次は違う方法を使ってやるぞ」
「っ!」
鬼面の能力の再発動を読み取ったように、サクヤがそう答える。
しかし、鬼面はそれを拒否することが出来なかった。いや、挑発に乗ってでもこの能力を展開しなければ勝てないことは分かっていたからだった。
そして再び能力を再発動し、前回よりも刃の量は多く、隙間もほとんどなく、まるで鉄格子のように配置される。
「よく自分の挑発に乗った。ご褒美にもう一つだけ絶望を増やしてやろうじゃないか! 行くぞ、これでお前の顔も見納めだ!」
今度は鬼面からではなく、サクヤから駆け出す。展開された刃など、まるで意味なんてないかのように。その姿は先ほど自慢気に語っていた鬼面の動きそのものだった。
鬼面も驚きを隠せないように、自らの刀を構えるもそれは隙が生まれていた。
その隙をサクヤが見逃すはずもなく、先ほどと同じように空間から柄を出現させ、空間から引き抜くと現れるのは大剣。その大剣を受け取る流れのまま、展開された刃など関係なしに鬼面の刀ごと斬り折る。そして、振り下ろした流れで柄から手を離すと、大剣は再び空間に沈み込み、今度は腕を振り上げる流れで新たな柄――剣を空間から出現させて斬りつけた。
鬼面はその能力に驚きを隠せなかったが、驚きの声などを出さしてはもらえなかった。
サクヤがその能力を使って、隙のない斬撃を出し続けていたからである。能力故に自分のタイミングもばっちりであり、隙が生まれるはずもなかったからだ。
結果、鬼面は魔物が死ぬ前に起きる塵化ではなく、サクヤの物理的な攻撃により塵化させられてしまう。
パキィーン!
術者が死んだことにより、展開された結界はガラスが割れるような軽い音を立てながら崩れ、何事もなかったように消え去る。
「相手が悪かったな、鬼面よ。自分じゃなくクサビやアラベラなら、まだ勝ち目――いや、ないな。お前が相手にして勝てるのは魔物程度ってことだ。ま、愉しかったぞ」
サクヤはその残骸を見つめながら、少しだけ満足そうに笑っていると、視界が歪み、シュウとリニスがいる部屋に転送され始めるのだった。




