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(5) 【アラベラ視点】

「し、死んだはずじゃ……い、いったいどこにいる!」


 天一郎は周囲三百六十度全て見渡すが、アラベラの姿はどこにもなかった。なのに、笑い声ばかりが気味悪く空に響き続ける。


「ここだよー!」


 笑い声が止まり、エコーのかかった声でそう言うと、辺りを飛んでいたコウモリが天次郎と天三郎の中心へと集まり始める。そのコウモリが集まり、黒い塊を形成するとそれは次第に色づき、片手にサイズを持ち、片手に天次郎と天三郎の頭を持つ一人の少女――アラベラが姿を現した。


「いやー、死ぬかと思ったよ。あんな風な高度な連携を取られるとは思ってみなかったからね。頭狙いで来てたのは分かってたけど、全身を切り裂く痛みで集中力を低下させて、首を撥ねるなんて思わなかったし……。あ、ごめん。間違えた。あれぐらいじゃ、私は死なないんだけどね」

「ど、どういうことだ?」

「ん? 私は他の吸血鬼とは違うってことだよ。いくら首を撥ねられようが、お腹を抉られようがそんなんじゃ死なない。本当に殺したいなら、細胞そのものを一度に全部滅さないとね」

「っ! お、お前はいったい……」


 予想を超えた相手を目の前にしている天一郎は恐怖を覚えてしまっていた。

 その恐怖が、勝手にアラベラから発されるオーラをドラゴンの頭部へと姿を変え、一口で食われる映像を脳内で描いた。

 仇討ちをしている場合などではない、と気付かされた天一郎は思わず一歩後ろに下がろうと動いた時、首筋に感じる冷たい何かに即座に動きを止める。その冷たい何かを確認するために首元を見つめると、そこにはアラベラの持っているサイズの刃が背中側から回り込んだ状態で配置されており、その刃先が視界に入った。


「なに、逃げようとしてるの? というより、気付かなかったの? よかったね、動きを止めて」

「――――!」

「あのさ、人の首を撥ねる攻撃しといて、自分だけ無事で済むと思わないでね。同じ痛みを味合わせてあげるから。まずはこの二人からだから、ちゃんと見ててね? そのために簡単に塵にならないように魔法で頭と体の時間を止めてるんだからさ」


 アラベラはにっこりと笑い、天三郎の頭を身体の方へ向かい投げ、


「こいつには風の魔法使われたし、ふさわしい魔法にしてあげようかな」


 体と頭が重なった瞬間、天三郎が使った魔法――風の刃で頭と体をどんどん切り裂いていく。時間にして数秒で頭と体は一瞬の内にこま切れ状態にされ、塵と化した。


「んで、こいつは雷だっけ? 雷を使って発火させるのも面倒だし、火の魔法で代用しようっと。首を斬ったのもこいつだから切り刻んであげたいけど……んー、サイズは動きを止めてるのに使ってるし、しょうがないから直接でいいか。本当は切り刻みたかったんだけどなー」


 残念そうな呟きを言いながら、天三郎と同じように頭を体の方へ向かって投げ、頭と体が重なった瞬間、炎が燃え上がる。しかも赤い炎ではなく青い炎。完全燃焼のせいで、天次郎の身体は一瞬にして燃え尽き、塵も残らなかった。


「ひ、酷いことを……」


 その様子を見ていた天一郎は、思わずそう呟いてしまった。


「そう? その酷いことを私にしようとしてたんでしょ? でもさ、おじちゃんたちよりマシじゃないかな? 命は先に奪っておいてあげたんだから。死体をどうしようと私の勝手でしょ?」

「お、俺はどうするつもりだ? 殺すんだろう?」

「殺すよ。当たり前でしょ? 自分だけ逃げられると思わないでね?」

「―――!!」


 アラベラは迷いなく言い切った。

 その迷いなく言い切ったアラベラに対し、声にならない声を上げながら天一郎はその恐怖のせいで、目から涙が自然と浮かんできてしまっていた。

 うわー、大の大人が泣いてるー。情けないなー。もうちょっと凛々しくしないと駄目なんじゃないの? そう思いながら、アラベラは笑顔を消すことはなかった。天一郎の始末する方法はすでに決まっていたから。


「じゃ、最期に言い残すことは?」

「お、おじょうちゃ――へ、あ……」


 言い切る前に首の後ろに置いていたサイズを手前に引き、首を撥ね飛ばすアラベラ。頭と体が数センチ浮いた瞬間、氷塊に封じ込める。

 その氷塊は重力に従い、下へと落下していった。


「最期の言葉とか聞いてあげるの、嘘に決まってるじゃん。生かせておいたのは弟さんたちの死体を弄ぶ姿を見せたかっただけなんだし。反撃してくるかと思ったのになー。最後までつまんない相手だったね」


 落下していく氷塊を見つめながら、つまらなそうにアラベラは毒舌を吐くのだった。


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