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 アラベラもクサビの隣に座り、それぞれ所定位置が決まった所で改めて食事を開始した。

 シュウはまず一番に出来たサクヤが作ってくれた焼き魚を手に取った。おにぎりは冷えてしまっても美味しく食べることが出来るが、焼き魚はそういうわけにはいかない。だからこそ、先に食べることにしたのだ。


「じゃあ、改めていただきます」


 そう言って、勢いよくお腹の部分を口に含む。

 ちょうどいい塩加減で美味しく食べていたが、どうやら臓物の部分も入っていたらしく、思わず苦みがシュウの舌を襲う。

 あまり好きではない臓物の味に顔を歪めながらも、吐き出すという選択肢は出ずにそのまま勢いよく飲み込む。

 同時にクサビはシュウへと水の入ったコップを差し出してくれたので、それを受け取ると一気に飲み干した。


「大丈夫ですか?」

「う、うん。ありがとう」

「あまり無理して食べなくても大丈夫ですわ。ね、サクヤ」

「ん、そうだな。臓物は好き嫌いが分かれる部分だ。あまり無理して食べる必要もないぞ。残すというのは別だけどな」


 クサビの意見に対し、サクヤは頭から魚をかじり、骨ごとボリボリ食べながら賛同した。

 賛同しながらも、サクヤは骨も臓物も何も関係ないというような豪快な食べ方を行っているので、シュウは少しだけ居たたまれなくなる。

 クサビの方はと言うと、うまい具合で臓物を避けるような食べ方を行っており、美味しい部位だけを食べていた。


「ねーねー、クサビお姉ちゃん」

「なんですか?」

「少しだけお魚分けて!」

「いいですよ」


 クサビは魚の尻尾部分を指差して、アラベラの小さな口を誘導して、少しだけ分けてあげていた。

 何度か租借した後、アラベラは顔を少しだけ悩ませる。


「どうしたの? アーちゃん」

「美味しいのか、分かんないの。美味しそうには見えるんだけどねー」

「え、本当に美味しいんだけどなー」

「味覚的な問題だから、本当に美味しいんだと思うよ。私は吸血鬼になったおかげで味覚が少しおかしくなってるんだよね」


 慣れてしまっているのか、少しだけ困ったような表情を浮かべつつも気にしないとでもいうような雰囲気でケラケラと笑う。

 無理してるようには見えない。けど、本当はどんな気持ちなんだろう。何とか力になってあげたいな。何か出来ないかな。

 そんなことを考えているとシュウの頭に軽い痛みが走った。

 叩いたのは隣にいるサクヤ。


「痛いよ」

「そんな同情の視線、送らなくてもいいんだ。他人より自分の心配をしてろ」

「自分? もしかして……サクヤさんのこと?」

「いや、シュウ自身だ。自分の心配をしてどうする」

「あ、心配して欲しいのかと思った。だってサクヤさんの一人称が『自分』だから、分かりにくいよ」

「……なんか言葉の注意が多いのは気のせいか?」


 困ったようにサクヤは身が無くなった串を受け皿へと戻す。代わりにおにぎりを一個取りながら、アラベラとクサビを見つめる。


「自業自得ですわ」

「自分自身のせいだよ」


 二人に冷たく突き放される。

 サクヤは「ふむ、そうか」というような表情を浮かべながら、おにぎりを半分ほどかじった。


「おにぎりも食べてみますか?」

「あ、うん。味分かんなかったらごめんね?」

「それはしょうがないことですわ。量はたくさんありますし、一口分だけにしておきましょうか?」

「あ、ありがとう」


 クサビはアラベラにそう持ちかけると、作った中でも一番小さいおにぎりを手で少しだけちぎると、それをアラベラの口の中へと運ぶ。

 アラベラもクサビの行動に逆らうことなく、自らの口へと運び、味を確認するように租借。そして、感想。


「んー、よく分かんない。これも美味しそうなんだけどなー……」

「それはしょうがないことですわ」

「うん」


 寂しそうにアラベラは唇に指をおいて、おにぎりをジッと見つめていた。


「あれ、どうしたの?」


 その様子をボンヤリと見ていたシュウを不思議に思ったのか、アラベラは唇に指を置いたまま尋ねた。


「ううん。二人って姉妹みたいだなって思って」

「あー、そういうこと。本当の姉妹じゃないけどね」

「それは分かってるよ。お互い世界の違う魔王だしね」

「説明したからね」

「なんか、そういうの羨ましいなーって思って」

「え?」

「ボクにはもう家族いないから、今まで一人で過ごしてたでしょ? だから、二人が家族みたいで羨ましいなーって思ったんだよ。なんかおかしいかな?」

「おかしいよ」

「あ、やっぱり?」

「うん。だって私たちはお兄ちゃんを家族として見てるもん」

「……え……?」


 アラベラの言葉にシュウは耳を疑った。

 どういうこと? いつからそうなってたの? ボク、知らないんだけど……。そんな風に考えながら、アラベラの言葉を確認しようとクサビを見る。

 クサビは笑顔を浮かべて頷いていた。

 今度はサクヤを見る。

 笑顔ではなかったものの、指に付いた米粒を口で舐めとりながら、同じように首を縦に振った。

 今度はアラベラを見つめて、その理由を確認しようと見つめる。


「あ、やっぱり気付いてなかったんだ。勝手にそうするの悪いと思ったんだけどね、お兄ちゃんが一人なの分かってたから、そういう雰囲気で接そうって三人で勝手に決めてたんだー。だから、私はお兄ちゃんって呼んでるでしょ? あ、家族設定上私が妹だね!」

「私がお姉ちゃんか、母親になるみたいですね。私としてはお姉ちゃんの方がうれしいんですが……」


 その流れに乗るようにクサビが申し訳なさそうに語る。一応、シュウの様子を伺いながら。

 アラベラはそんなこと関係なしにサクヤを指差しながら、


「そこにいる頑固親父ということになってるよ!」


 と、小馬鹿にしたような笑いと共に発言。

 サクヤは食べていたおにぎりを軽く吹き出し、


「だから、それは止めろと言っている! っていうか、最初より酷くなってるだろ! これでも女だぞ!」


 不満を露わにした。


「じゃあ誰が保護者役するの? クサビお姉ちゃんはお姉ちゃんだよ? サクヤお姉ちゃんは呼び名だけで我慢してよ。お兄ちゃんはそれでもなくても心配なんだからさ」

「心配なのは分かる。分かるが、自分を父親役に勝手に任命するな」

「まぁまぁ、そう言わずに!」

「そんなんで誤魔化されると思うな! だいたいこの設定だって、シュウが認めなかったら駄目……なんだ……ぞ…………?」


 その確認をしようとサクヤはシュウを見つめると顔を俯かせて、肩を震わせていた。

 クサビはその様子から察したらしく、口元に指を一本立てると二人に静かにするように促す。そして、シュウの顔を見ないように空に浮かぶ月を見るようにしながら、シュウの頭に手をまわし、そのまま自分の豊満な胸に引き寄せる。

 そのことを皮切りにシュウの泣き声が周囲に響き渡った。


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