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ⅡLive ≪セカンドライブ≫  作者: 工藤 遊河
一章 異世界
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教会へ

成長の度合いや環境の適応などには個人差が生じるものだが、晄は比較的速いほうだろう。

異世界に飛ばされて数時間の間にここが異世界だと割り切ってしまった。

幼馴染の優奈もこの一面には気付かない。

晄の心の中に起こった変化にも気付かず拳銃をしまう。

拳銃が青い粒子になって袖口に吸い込まれていく。

晄は光景を見逃しはしなかった。


「お、おい……何だよ今の」


優奈としては二年前ほどから染みついている動作だったために晄の指摘したことにすぐには分からなかった。


「あぁ……これね。変換式記録インベントリって言って、登録した物の構成粒子をデジタルに変換、つまりデータに作り変えてメモリの中に保存するっていうやつなんだけど……ほら」


といって袖を少し捲るとデジタルウォッチのようなものが手首に巻かれていた。

これは時計としての機能も持っているがメインはキャリーとしての機能である。

二年ほど前に開発されたもので道具の運搬の不便を一挙に取り除いた革命品。

スマフォのように瞬く間に世に出回った。

そして最大の利点として道具を、主に武器などのかさばる物をデータに変換して腕時計の中に収納(記録)することができる。

これによって個人での多量の道具の所持と運搬を可能にしたのである。

インベントリと付くがこれは収納した物をウォッチの液晶から五ミリほど離れたところに一覧として表示することができるからである。(空中に画面を出力)


「なんていうか、技術的には進んでるんだな」

「一部分においてはそうだけど、あっちの世界にはあるものがこっちにはないなんてこともあるからね。まぁ、細かいことはそのうち話すから。今はやらなきゃいけないこともあるし」


そうだ、優奈には用事があったのだった。

再び獣道を歩き出す。


☆☆☆


晄が簡単な質問をしては、そっけなく返される。

会話が途切れながらも優奈に付いていく。

先に広い空間が見えた。もうそろそろ抜けるようだ。

獣道の途中から石畳が敷き詰められている。

手入れもされておらず、石と石の隙間に雑草が生えている。

石畳は一直線に伸び、その先に木で作られた古いアーチが建っていた。

アーチの向こうは小さな町になっているようだったが人気がない上に家屋も煉瓦の積み重ねを残して潰れていた。

まるでゴーストタウンだ。

アーチにはハンブルと書かれていることから町の名前だろう。


(ん?日本語?この世界の言語は日本語なのか……)


晄はハンブルという文字がカタカナで書かれていることに疑問を感じた。

世界が全く違うのだから日本語が通用するということは妙だろう。


「なぁ、日本語でいいのか?言語って……」

「私もそれは思ったけど皆日本語よ。」

「へぇ、都合がいいな。」


都合がいいのは確かだが事実は違う。

晄たち日本人は慣れ親しんだ日本語に見えるが、日本人以外の外国人が見るとその字は外国人の母国語に変換されている。この世界の人間には別の文字、いわゆるこの世界の言語で表わされる。

日本人と外国人が会話した場合も同じく英語が日本語に、日本語が英語に聞こえる。

なぜそのような都合がいいことになっているかというとそれはこの世界に転生した時の特典(知識)に起因する。

晄や優奈のようにあらかじめ成長した段階で転生した場合に限るが、慣れ親しんだ言語を捨てていきなりこの世界の言語で話せというには酷だろう。

転生してしまえば一人身、信用できる人間を見つけなければならない。だがその交流で言語による支障が出てしまえば……。

そういったことを回避するために金髪の青年の上司である神が施したのである。

石畳を進んでいく。辺りは廃墟同然の街並みしかない。

この街に入った時から見えていた教会らしき建物の真下に付いた。

この建物は天主堂に酷似しており灰色一色でできている。

しかし、街の現状と同じくして、右側が崩れている。


「思ったより立派にできてるんだな、ここ」


晄が言った。


「何十年前までは町として機能してたみたいだけど、原生生物の混乱による侵攻を受けて今の状態みたいよ。結局再開発も進まないままほったらかし……」

「考えが及ばないな、生物の侵攻なんて……。それでなんでこんなところに足を運ぶことになったんだ」


優奈に問う。


「町には直接近づく人はいないけどその周辺には近付くの。薬草とか山菜狩りとかで……。そしたらそんな人からこの教会に轟音と砂煙が上がるのが見えたっていうから調査の依頼が来たの」


廃町は酷いものだが教会の損傷具合を見た限り比較的綺麗だった。

内部の損傷が少ないとみて盗みを行う物でもいるのだろうと晄は思ったがそんなことはもう何十年も前に行われているだろう。

それに轟音が鳴ったということはどこかで入口を作るためだろうが、いま目の前にある入口は扉が開けっぱなしになっているため入口を作ったという線はない。

優奈が言った。


「中に入って調べるか……」


晄が肯定した。


「調べるんだったら入るんだろ?だったら入ろうぜ」

「アンタがしゃしゃり出てきたって役に立たないでしょ……」


教会に踏み入れる。

ここは大広間になっていて倒れたイスや割れた焼物がある。この先が礼拝堂だろう。

放置されて時間がたち過ぎていることもあって足跡が付くほどに埃臭かった。

数分で一通り歩き回ったが大広間には変わったものはなかった。

何かあるのならば礼拝堂だ。地下という可能性はあり得るがまずは一階から調べ上げるものだ。

礼拝堂の両開きの扉に優奈が手を付けた。












あまりにも腕時計の名前が思いつかないのでそのうち変更するかもしれません。

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