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ⅡLive ≪セカンドライブ≫  作者: 工藤 遊河
一章 異世界
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世界の顔

雑木林を突き進む道中に晄の左から植物の茎が伸びた。

二メートルほど伸びたそれはホウセンカの茎の太さほどしかないにも関わらず頭頂部にスイカ程の実をつけていたが、それは先ほど弾けて四枚の花弁になった。

それは晄に覆いかぶさろうとした。


「危ないっ」


優奈が叫んだ。同時に晄を跳ね飛ばした。


「いってっ……なにす……る……」


言葉が詰まる。

飛ばされたときに背中を打ったため、擦りながら前を見ると赤い花弁をした植物が横たわっていたが晄の知っている植物ではない。なぜなら茎と花弁を小刻みに震わせ、立ち上がろうとしているからだ。


「気持ち悪……」


第一の感想はそれだった。それとしか言えなかった。

ファンタジーでは当たり前の植物系のモンスターになるだろう。

移動はしないが見た目はグロテスクなのがセオリーだ。

もっと言うと花の中央から長い舌やら、花弁の縁には牙がついていたりする。

だが目の前にいる植物にはそれがなく、そのまま立っていれば大きな花として見れただろう。

見た目もチューリップに近い。チューリップだと思わせておいて、近づかせて先ほどの晄のように覆いかぶさり捕食するのだろうか。どうやって捕食するかは不明だが。

しかし、二メートルもあるチューリップに誰が近づくだろう。この世界の人間は知っているだろう。

晄の世界の人間も怪しすぎて近づかないはずだ。

どういう進化をしているのか不明な植物は大きな頭をやっとこ持ち上げた。

しかしそれを皮切りにさらに二体地面から伸びあがってきた。

一体目の正面、つまり晄のいた場所を挟むように1体。そして二体目の右斜め奥から一体である。

すると優奈は跳ね飛ばした晄に構うことなく白い拳銃を取り出していた。先ほど付きつけていた拳銃と違う。

むしろ良く見るものだった。


(あ、たしか・・・M1911だっけ)


洋画でお馴染、ゲームでお馴染の拳銃だ。

コルトガバメントという愛称でも親しまれる。

ただしノーマルのM1911ではなく、その系統にあたるインフィニティというもの。

マズルを延長したフレームとレールを施したカスタムガンでもあった。

装弾数もノーマルのM1911の七発よりも八発多い十五発となっている。

ただし晄は細かいことまでは知らない。


優奈はインフィニティを両手で構え、晄を襲ってきた一体に向け、言った。


「この世界はこういう世界よ」


一体に向かって引き金を引いた。

銃声が起こり、花のがくが透明な液体をまきながら弾ける。

空薬莢が一つ地に付く前に右のもう一体も同じように弾ける。

二つ目の空薬莢が地に付く前に最後の一体も爆ぜた。

三つの空薬莢が転がる。

三体の植物の花冠も転がる。

頭を失った茎は一様に倒れ、動かなくなる。

時間にして一秒半。

優奈がふぅ、と肩を下ろした。


「どう?驚いた?」


左手を差し伸べてくる。


「驚いたも何もないだろ」


左手を借りて立ち上がった。

立ち上がると植物の残骸が散らばっているのがよく見える。

花が散ったようにしか見えないが先ほどまで動いていたのだ。


(こういう世界か・・・。命を狙ってくるんだから仕方ないのか)


仕方ないというのは先ほどの優奈の取った行動である。

前世の彼女との性格と照らし合わせるとギャップがある。

少なくともああいうことができる人ではなかったはずだ。

優しいとは言い難かったが、ある程度の温厚さを持っていた。

それをも変えてしまうのがこの世界なのか。

それとも変わることを余儀なくされるのか。

自分もいずれあんな風に躊躇なく命を狩るようになるのか。なってしまうのか。


(まだあっちの世界の人間なんだな、俺も)


そうだ。この世界は晄のいた世界ではない。ならば潔くあちらの世界の常識と概念を捨てればいいのだ。

戻れないのだ。この世界で生きることしか出来ないのだからこの世界の理に染まるしかない。

初めはつらいだろうが慣れるはずだ。

家族と友人の記憶が薄れて、見えなくなるほどに朱に染まればいい。


この瞬間、晄は優奈ですら蹴りをつけるのに一年もかかった葛藤を蹴り飛ばしたのだった。













銃の話が出ていますがウィキや手当たり次第に調べたものを寄せ集めたものなので間違いがあるかもしれません。


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