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ⅡLive ≪セカンドライブ≫  作者: 工藤 遊河
一章 異世界
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新しい世界

時間にして一秒もない、動作にして瞬き一回ほど。


青年の説明を終え、次の客が来たといわれた時にはすでに大自然の中に放り出されていた。

青年はまだ何か言っていたようだが聞き取れなかった。


今目の前に広がる光景は美しいの一言に尽きるほどに美しい。

陸には草原、空は恐ろしいほど青く、風が通るたびに草の擦れる音が聞こえる。

美しい自然という題で絵をかけと言われればだれもこの景色のように描くだろう。

立ち上がりその場で回ってみると自分の後方に森林があった。

そのまま元の位置に戻ってくると自分の脚に布が擦ったような感じが伝わる。下を見ると自分の足は黒いブーツで覆われている。柔軟性のある革で作られたであろうズボンも穿いていた。上には赤が少し入った焦げ茶色のコートでこれも革だった。着合わせとして黒いTシャツも着てある。


(なんだかな……、この服装)


晄は十七である。この手の服装で喜ぶ歳ではないと思っている。(中ニ病ともいう)


(でもこれが普通の服装なんだろうな。)


しかしこれだけではない。コートの上、右肩からタスキを掛けるように革ベルトが横切っていた。

そしてその背中にはズシリと重たい黒い剣が黒い鞘に納められていた。

肩から下ろして鞘から剣を抜いてみる。


(ロングソードとかっていう奴か。片手で持てない重さじゃないな……。にしても刃まで黒いのかこれ)


正式にはロングソードではなくバスタードソードと呼ばれる刃渡りが八十センチから百センチ程の片手でも両手でも使用可能な剣である。晄にとっては長ければロングソード、短ければショートソードだった。

実際重さもそれほどにある得物を晄が片腕で難なく持っているのは特典のおかげだということを知らない。


黒一色で作られた剣は鋳造式かと思うほどに継ぎ目がない。溶けた金属を型に流し込んで作るため安価になる。つまりは大量生産されたものだ。だが晄はそんなことも一切知らない。


黒剣を右手に持ちX字に振ってみる。振り終えたときに少しばかり腕が持って行かれたが慣れれば問題ないだろう。


(とりあえずここまでにしてと・・・、これからどうするかな。アイツがこの世界にいることは分かっていても場所までは知らないしな)


剣を鞘に戻し、肩にかけなおしながら考える。今思えば青年のいたあの世界についての記憶もある。他言無用なのだろうか。それはそうだろう。そんな事を知れば生まれ変わりたいと自殺者が出るだろう。実際本当に生まれ変われるとは限らない言い回しではあったが。


今後の方針に決めかねて(決めかねるどころか何一つ思い浮かんでおらず)いた晄の背後に恐ろしい速さで接近してくるものがあった。正確には、いた。

草原の草を激しく鳴らし、人の範疇を超えた人外の速さで晄の背に無骨なデザインをした拳銃を突きつけた人物がいた。


晄が風が鳴らす音とは違う異種の音を背後に聞いて振り向く前に「動くな」と冷たい声で言われると同時に堅い物がつきつけられた。


「なにっ!?」


声が裏返りながらも驚きをぶつけた。


「喋るな」


と吐き捨てられる。

声のトーンからして女性だろう。

晄は自分が脅迫されていると感じた。間違ってはいない。洋画でよく見る劇だ。

だが脅迫されているからといって不安にはなれなかった。

むしろ懐かしさを感じてしまっていた。


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