死後の世界
高校二年生高市晄の思い出せる最後の記憶は白いセダン車が正面からこちらに向かってきたという記憶だ。ここから先の記憶はなく、この記憶から連想するに、ぶつかったのだろうと思うが確認できるすべがない。
そもそも何故こういうことをしているのだろう。今、晄の目の前は真っ白だ。もっといえば三百六十度真っ白で地面と思しきものは霧がかかっている。
頭を働かせようにもぼーしていて働かない。「そろそろ、説明をしてもいいだろうか」と晄の後ろから声がかけられ、重たい体を声の出所へ向けた。
そこにいたのは青年だった。晄よりも年上というのは見て明らか、二十代前半の顔立ちをしており、髪は今風の若者のように目にかかる程度で金色をしている。眼は綺麗な赤、身長も高く、百八十はあるだろう。服装は白いTシャツに上は革ジャン、下はクラッシュジーンズというパンクファッションにはならないだろうがロックミュージシャンのような服装をしていた。全体的に見てよく似合っており、イケメンという言葉相応しい人物だ。
そんな彼を見上げて初めて晄はあぐらをかいて座っていることに気がついた。
言葉をかけようにも、頭が働かず声が出せない。
「ちょっと間慣れないだろうから慣れるまでにお前がここにくることになった経緯を説明するぞ」
割れのない綺麗な声が晄の耳に入った。
「単刀直入に言うが、お前は車に跳ねられて亡くなった。そしてお前は亡くなったからここにいるんだ。お前らの概念では天国とか地獄とか言うみたいだがどっちでもないからな」
冴えない頭の中に今の言葉を焼き付け、頭を働かせる。
(俺は死んだ?)
「俺はこの世界、神の世界の人間だ。あ、俺は神じゃないからな?神は俺の上司にあたる人だから俺はどうだと言われると神の使いである天使になるからな」
この場にまともな人間がいれば、彼のような服装をした人間を誰も天使だとは言うまい。世間一般的には天使といえば金の髪をした赤ん坊に小さな白い羽がついているという認識だ。しかし今の晄の頭は、彼が天使で神の使いという認識を持とうとしていた。
(そうか、ここは死んだ人間が来るところで、コイツは天使なのか……)
ようやく頭が働きだしたかと思いきや、この有様である。
「で、だな。お前がこれから何をするかと言うとだな、新しい人生を作るためにお前はこれから生まれ変わるんだ。それも特典を付けてこの俺がお前に相応しい世界を提供してやる」
人が亡くなれば亡くなった本人はどうなるか?という永遠に答えの出ない問がある。
諸説あるが現代の人間が頭に思い描いていることは、彼の言ったように新しく生まれ変わる、四字熟語にあるように輪廻転生を行う。もしくは天国か地獄かに分かれて死後の世界で生きるなど、大まかに分けるとこの二つが有力だろう。宗教、時代によって様々だが、この二つほど有力なものはないだろう。
そして彼の発言は前者にあたる。輪廻転生である。
だが彼は晄に「相応しい世界を提供する」と言ったのだ。
輪廻転生というのは死んだ人間の魂がこの世にかえってくるという意味だ。この世というのは晄が生きていた世である。晄にとって晄の生きていた世は相応しいものだっただろうか?そんなはずがない。たった十七で人生の幕を閉じたのだから。だから天使は晄が人並みに(友達を作り、恋人を作り、職に就き、結婚し、家庭を作るなど)生きることのできる世界を提供するというのだ。輪廻ではない、転生だ。
(死んだら、転生するのか・・・これは死んだ人間にしか分からないな)
晄はここにきてから自分が死んだと言われたが、死んだからと言って何の感情も湧かなかった。
この空間の効果か、それとも・・・望んでいたのか。
(だいぶ頭がスッキリしてきた。まずはコイツの話をきかないとな……)
天使は晄が眼の色を取り戻したのを見た。
(そうそう、その眼だ。この眼ばかりはいつ見ても綺麗なものだ)
口元がにやつき始めた天使にあるまじき天使は話を再開した。
初投稿、初小説となります。
文脈がおかしい、言葉がおかしい、理解しがたい
などありますがよろしくお願いします