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ⅡLive ≪セカンドライブ≫  作者: 工藤 遊河
一章 異世界
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藪の中で…

元気な幼女は一本道をまっすぐ歩こうとしてくれなかった。

時折、脇の竹藪に入って行ってはタケノコを、細い竿を持ってきたりと蛇行が目立つ。

それでもしっかりと戻ってきてくれるので追いかけたりはしない。

幼女は大きな目にショートヘアーの黒髪と綺麗な作りをしているがそれ以上に服装だった。

あの依頼人のような和服ではなく、巫女装束に近い服装だった。

作りも日本の物と良く似ている。民族的にはかなり前から存在しているが決して江戸時代辺りの人間が転生して文化をもたらしたわけではない。まったくの偶然である。

世界が違うからといって、文化の違いがあるとは限らない。同じ思想が出来上がることだってあり得る。

晄がこの短い間で目撃した依頼屋は腰に刀を下げていたりした。箸もあった。

ここですでに思想が交差しているのである。

少し優奈に聞いてみる。


「なぁ、ああいうのって、元からこの世界のものなのか?」

「全部がそうって訳じゃないけど刀とか銃はもたらされた物って聞いたことあるけど?それに魔法があるからその手の物はあまり発展しなかったとも言ってたわね」


優奈の口振りは他人から聞いたようなものだったが晄はそれで納得した。

そういえば魔法とは何だろう?と思ったのでこの際聞いてみた。


「そういやあの天使は魔法がなんとかって言ってたけど、どういうものなんだ?」


幼女に聞こえないようにひそひそと喋る。


「そうね、誰でも使える便利なものだけど才能と運に左右されやすいものかしら。実際、アンタの前で使ったのは防御魔法だけどいろいろあるわよ」

「あぁ、あの割れたやつか」

「ブッ」


カイリが吹き出した。

実際割れたのだから否定は出来ないが、


「アンタまで言うか…」


晄にまでその印象とは情けない。

カイリが口を出す。


「魔法ってのはな、こういうのだよ」


するとカイリは左手の人差し指を立てた。

次の瞬間、指先を中心に青色の円が広がった。そして円の上に手頃な石を乗せた。

それは落ちることなく円の上で止まっている。

巫女の幼女は目敏くそれを見つけて、触ろうと跳び跳ねている。


「こういう感じに障壁をつくるんだ。これを縦にすると盾になる」

「…」

「…」

「笑うとこだぞ」


幼女ですら、はて?な顔になっているのにも関わらず障壁を縦にした。

乗せていた石は当たり前に幼女の顔に落ちた。

幼女は石が当たったところを押さえたが、それほど 痛くないようだ。カイリは彼女の頭を撫でながら言った。


「ま、コイツとじゃ強度もなにもかも雲泥の差だが、必須のスキルだな」

「アンタねぇっ」


何かあるたび比べられては馬鹿にされ、優奈も腹にきているのだろう。


「魔法もこれだけじゃないからな、色んな分類があるし、個性もある。それを自分で見つけろよ」


それからカイリは見かけによらない、小難しい言葉を並べて説明をしてくれた。

魔法には衝撃、防御、強化、探知、分解の四つがあること。

また水、火、風、電、氷、光、闇、治癒の属性。

事象の発生に必要な魔力が人間や動物、物質に備わっていること。

魔法式と言う効能子(魔力の別名)の組み合わせによって生まれる効果のことや魔法師の優劣判定。

優劣判定というのは魔法式の簡略性や発動速度、一回の使用で必要とする魔力の量、コントロールによって決まるというもの。個人差の大きい魔力量や属性は判定にはならない。

また、属性は誰でも宿るというものではなく、個人によっては扱えない。だがその代わりに特化という衝撃、防御、強化、探知、分解のいずれか突出して使えるなどして属性を使える者と使えない者の均衡が保たれているということなどと長々と話してくれた。

優奈も付け加えるように言った。


「魔法は誰でも使えるけど、どうやって、どういうふうに使えるのかは個人の感覚が頼りになる。何かのきっかけで一度でも発動できればコツがわかるのだけれど」


要は発動の仕方の指導はできないということだ。


「だから言ったろ?自分で見つけろって」


きっかけがあればコツが掴めると言うがそのきっかけと言うのは何なのだろうか。

危機的状況なのか偶然の産物なのか?速いこと使えるようになってはおきたいがこうも運任せなものとは……。

最初に優奈が言った運に左右されやすいというのはこういうことかと思った。

魔法学上ではきっかけがあれば才能の開花になるのだろうか。

しかし晄という人間は、この時点では思いつめてはいても数分後には頭から綺麗さっぱりと忘れてしまう人間であった。


☆☆☆


晄たち三人は時間をつぶすための雑談をしながら歩いていた。このころには優奈とカイリのほとぼりも冷めていた。

真ん中の道を一直線に歩いていたが、途端に周囲の竹の背が途中からバッサリと無くなっており、その先が隣の竹に掛かったり、地面に寝ていたりする荒れた風景へと変わった。


「どうなってんだ……こりゃ」

「……アレの仕業かしら?」


アレというのは今回の依頼のターゲットである。

カイリは竹の切り口を見て回る。

切り口は右斜め上、左斜め上に斬ったよう跡があり、さらに奇妙なのが竹の中腹辺りから縦に根元まで斬りつけているものもあった。

もしやとカイリは思った。


(そういや、残りの奴が推定で三体。唐竹、右切上、左切上のどれかを行う可能性があるんだよな)


もしそうならばここでターゲットの可能性であるロボットを三体とも捕獲することも可能だ。


「どうする?俺の予想は三体いるんだが?」

「三体?ということは残りが全部ここに?」


優奈が聞き返した。


「可能性はないとも言えない程度だが竹の切り口からすると……ッ!?」


カイリは突然何かに身構えた。それに一拍遅れて優奈も警戒しだした。


「どうしたんだ?急に」


晄は幼女と共に当惑した。辺りがしんと静まり返って笹が風に揺れ、擦れる音だけが聞こえる。

だが静寂になってやっと晄は違和を感じた。笹の擦れる音の中に竹の葉で敷き詰まった地を蹴る音と風を切る音が混じる。異音は他方からも聞こえている。この速度からして動物か?


(二体、いや三体)


優奈は音の数を計った。

音が耳を澄まさなくてもよくなった瞬間、黒い影が一つ、進行方向から見て右から恐ろしい速さで駆けてきた。

その影は長物を振り上げ、カイリを襲う。

そのままでは真っ二つに体が裂けるだろうがカイリは回避行動を取らなかった。だが長物はカイリの目の前で、ある棒に拒まれた。腕時計から呼び出した槍だ。

柄の長さはカイリの背丈ほどある。先端は土星のような赤い球体、黒い楔型の刃が付いていた。全体的に黒いフォルムだが、赤い球体と赤いクリアなラインが引かれていることによって上品さを醸し出している。


「おうおう、相変わらず」


以前にもお手合わせしたことのあるカイリは感嘆を洩らす。

現に彼は完璧なタイミングで件の黒騎士の剣を防いだ。

言うだけあってしっかりとしていた。


「振り下ろすまでこのままか、変わってないな」


コレも同じく点から点までを線で引かないと次の行動に移れないようだ。

残り二つはあの二人に任せよう。

そしてその二つは左右から、一つ目より少々遅れたが、二つ同時、晄と優奈の左右から仕掛けてきた。

優奈のほうに右切上、晄のほうに左切上。

優奈は左下から襲う刃を紙一重、身を引いてかわした。

問題は晄のほうだが身を捩って辛くもかわす。

空しく空を斬った二つの剣は交差し、重い打撃音を鳴らす。

予想通り右切上と左切上行うようだが、同時であった。つまりX字の斬撃が襲った。


「ッ!?あっぶねぇ」


二回目とあって青ざめることはなかったが、それでも一歩遅れていたらと思うとゾッとした。

幼女のほうはカイリの右足に恐怖からしがみ付いている。カイリの傍ならば問題はないだろう。

当の本人は余裕のある顔だ。

例によって黒騎士はロックオンしたターゲットの息の根を止めるまで標的を変更しない。

右切上と左切上の後ろにはカイリが背を向けているというのに見向きもしない。

晄と優奈を捕捉している二体はまたもX字に斬り付けようと、両方右手に付いた剣を左切上は、だらんとぶら下げた腕を少し後ろに引き、右切上は左脇腹まで寄せる。

しかし優奈はこの隙を見逃さない。

構えた二体のうち自分を狙ってきた右切上の膝に、コルトガバメントのクローンであるインフィニティの弾丸を二発撃ち込む。超速の二点タップは見事両膝に食い込み、ガクッと脚が上半身の重みに負けて落ちる。

しかし、もう片方は約5メートルという距離をステップで詰めた。一瞬で晄に迫った。

二体ともダウンさせるつもりだったが、一発目を撃ち終えた時点で片割が動いていた。


(しまったッ!)


超速は一瞬に敵わなかった。


後半あたりから携帯で書きこんでいるため誤字脱字があるかもしれません。

これまでの話を含めて誤字脱字を発見した時はお知らせください。

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