ターゲット2 とある人生の終わりと新たな人生 ㊦
さようなら俺達の日常・・・。
ようこそ俺達の非日常・・・。
その後の入学式は滞りなく無事に済んだ。生徒会長しっかりとしたスピーチすごかったな~。
そんなわけで俺と愛華は現在帰宅途中。そんな愛華は式の後でホームルームでたくさんの友達を作り、暮らすみんなから早速買ったばかりの携帯でアドレスなどを交換したらしい。笑顔がまぶしかった。
「それでねそれでね・・・」
よほど嬉しかったのだろう。できた友達について色々と教えてくれた。男友達もできたらしい。藍かもそろそろ恋人を作ればいいのにと思う兄であるが、俺もそろそろ作らなければ置いてかれてしまう。笑ったり、突然落ち込んだり、泣きそうになったりと色々表情を変えていたためか心配そうに愛華が覗き込んできた。
「お兄ちゃん、体調悪いの?」
「そんなことない、お兄ちゃんにも色々あるからそれで色々考えていたんだ」
「それならよかった。それでね・・・」
延々と続けられる妹による報告。そろそろ勘弁してくれと思ったとき・・・。そう・・・、このときに俺達は日常の世界から足を踏み外したのだ・・・。もう戻れない非日常の世界に足を踏み入れてしまったのだ・・・。
ずしーん ずしーん 目の前から巨大な怪物が現れた。腹から鎖みたいのがたれているやつ・・・。ぶっちゃ毛やばいんじゃないですか?
「お・・お兄ちゃん・・・」
すっかりおびえてしまった愛かは腰が抜けたのかへたり込んでしまっていた。
「おい、逃げるぞ!」俺は哀歌の腕をつかんでもと来た道を走り始める。それを見た怪物もまた、俺達に向かって向かってきた。ていうかなんで周りの人たちは気づかないの・・・て誰もいね~~。なぜかいつもなら人が歩いていてもおかしくない時間帯なのに誰も歩いていなかったのである。
「「はあ・・はあ・・はあ・・」」
俺達はただひたすらの学校に向かって逃げていた。なぜ学校かは分からないが自分でも分からないが、なんとなく学校が安全だという勘が働いたのだ。逃げてる途中も誰とも会わなかった。そんな状況を愛かも顔面蒼白で走っていた。
「よし・・ここまで来れば・・」
突如俺の腕が軽くなった。見ると肘から先がなくなっていた・・・。愛華とともに・・・。
「うわーーー」
あまりの激痛に俺は悶絶する。遠くの桜の木下には俺の失った腕と愛かがいた。愛華も頭から血を流していて、危険な状態だった。
「ぐ・・・くそー・・・。なんなんだこいつは・・・」
目の前のは口からよだれを駄々流しにした怪物が1体。今にも俺に襲おうとしていた。
「お・・・お兄ちゃん・・・」
愛華が弱弱しい声で歩いてきたのだ。
「バカ!何でこっちに来たんだ!さっさと学校に逃げ込めばよかったのに!」
「お兄ちゃんを置いていけないよ!」
「こんなときぐらい自分を大事にしろよ!お兄ちゃんらしいことをさせてくれよ!」
「お兄ちゃんがいなくなったら私・・・私・・・」
鋭いつめを持った腕が俺に向かって振り下ろされた・・・。
「おにいちゃんがいなくなったら私、支えてくれる人がいなくなっちゃう!そんなの嫌だよ!」
そう叫んだ愛華は俺のことを突き飛ばした・・・。ツキトバシタ・・・。
グシュゥゥゥゥゥ ブシュァァァァァァ
目の前で血が噴水のように噴き出していた。赤い水・・・血・・・愛華の血・・・。
「ああ・・ああ・・・」
俺は言葉にならないうめき声を上げた。目の前には腹から深々と引き裂かれた妹の変わり果てた姿があった。愛華は・・・俺をかばった・・・。何で?
「なんで俺なんかをかばったんだ!!」
俺は叫んだ。愛華は弱弱しく言葉を漏らす・・・。
「私がお兄ちゃんを誰よりも愛していたからだよ・・・」
そんな・・・そんなことがあっていいのか?俺のせいか・・・?俺が愛華を殺したのか・・・?
「逃げて・・・お兄ちゃん・・・」
俺は愛華に何もしてあげられなかった・・・。助けることもできなかった・・・。いつもそうだ・・・。愛華がいつも俺に笑顔をくれたから俺はいつも楽しかった。けしてシスコンではないが・・・これは兄として当然だろ・・・?でも兄である俺からは何も与えてあげられなかった。与えられてばかりだ・・・。俺は近くの木の棒を持つと怪物に向かって構えをとる。まったくの素人・・・。足は恐怖で震え、手も震えていた。まったく情けない・・・。
「お前のせいで愛華はこんなにも傷ついちまったじゃねえかーー」
俺は叫びながら怪物に突っ込む。するとわき腹を何か硬いもので思いっきり殴られて吹っ飛ばされた。ものすごく痛い。吐きそうだ。
「だ・・誰だ・・・」
前を見るとそこには日本刀を持った生徒会長吉川琴美が立っていた。
「ごめんなさい、神崎くん。ほかの事件でここを離れていたの」
そう言って刀を取り出した生徒会長は神速を生かし怪物に切りかかる。怪物はまったく姿を捕えられずただ切り刻まれるだけだった。そうして細切れになった怪物は青白い炎に変わり、そうしていつ現れたのか知らないが、宙に浮いた犬に食べられていた。
「あ・・ああ・・何なのこいつら。そんなことよりも愛華!!」
俺はすぐさま倒れている愛華の元にいった。もう生きているのが不思議なくらいだった。息も絶え絶え・・・素人の俺でももう助からないことは一目瞭然だった。俺の傍に来た生徒会長・・・。その表情は申し訳なさでいっぱいだった。
「すまない、神崎くん。私が誰かをここに置いておけばこんなことにはならなかったのに・・・。本当にすまない」
頭を下げる生徒会長。しかし俺には何を言っているのかが分からなかった。
「生徒会長・・・謝られてもしょうがないですよ・・・。愛華・・・何とかなりませんか!救急車を呼んで・・・」
「ごめんなさい!愛華ちゃんはもう助からないわ・・・」
やっぱり・・・。分かっていても認めたくなかった・・・。あきらめたらその場で愛華が死んでしまうと思ったからだ。
「そうですか・・・」
「愛華ちゃん・・・、私はあなたを殺してしまったといっても過言はないわ・・・。あなたはまだお兄ちゃんと一緒にいたい?」
「ま・・・まだお兄ちゃんと・・・一緒にいられるの??」
弱弱しく立ったが、その言葉にはわずかな希望がこめられていた。
「ええ、あなたがお兄ちゃんの腕となり守護霊となり、先ほどの怪物みたいなものと一緒に戦うの・・・。それでもいいならあなたをお兄ちゃんと一緒にいさせてあげられます」
「そんなことができるんですか?俺がこいつらと戦えば・・・」
「ええ、その和目にはもう日常生活はできないわ・・・。醜い戦いの世界に足を踏み入れなければいけないわ・・・。それでもいいならばやってあげるわ」
俺はどうしたい?愛華とまだ一緒にいたいのか?俺は・・・俺は・・・。
「愛華は・・・愛華はまだお兄ちゃんと一緒にいたい・・・。お兄ちゃんがいるならほかには何もいらない・・・。お兄ちゃんが傍にいてくれればいい・・・」
愛華は俺といたいと決心している・・・。なら俺がとるべき道は・・・選択肢はただ1つしかないだろ!!
「お願いします!!愛華を俺の守護霊にしてください!!」
俺は深々と生徒会長に頭を下げた。会長は一瞬と惑ったが、納得した表情になった。
「分かったわ、あなたたちが決めたことならば私は止めない。その代わり、神崎くんあなたには生徒会に入ってもらいます。詳しいことは明日生徒会室で話しますので今は何も聞かないでください」
すると会長はポケットから御札と黒い数珠を取り出した。御札を愛華に貼り付け、数珠を俺の失った右腕にのせた。激しい痛みを必死に我慢していた俺だが、さすがに傷口に物が載せられたときには悲鳴を上げてしまった。そんな時・・・。
『まったくなんなのさ、この男は。深夏は両足失っても泣かなかったのに腕一本でこうもピーピーと』
「ハク!!言いすぎだよ!!神崎くんは何も知らなかったんだからいきなりでしょうがないよ。それよりも始めます」
そうするといきなり回しが白い光で満たされた。
「これより契約するものの名は神崎佑介、守護霊たるものは神崎愛華。我吉川深夏、そしてその守護霊ハクを媒介として契約となせ!!」
辺りを包んでいた光はなくなり、俺の腕は元通りになっていた・・・。ただ、右手に刀があることを除いては・・・。
それに後ろには前に倒れていた哀歌が透明になってふわふわと浮いていた。
「本当に幽霊になっちゃったの??」
「私お兄ちゃんの守護霊になっちゃった」
「今日のところはここまでだ。詳しいことは明日の放課後生徒かいしつで説明する。われわれの仲間も紹介しよう。必ずその刀も持ってくるんだ。普段は守護霊に持たせておけばいい。守護霊は使えないけれどもな」
「分かりました・・・。後愛華の死については・・・」
「それはわたしたちが愛華ちゃんが急に引っ越すことになったことを伝えておきます。もちろん連絡はできますよ、今までどおり携帯で」
「それじゃあ、この刀以外は今までどおりの生活ができるのですか??」
「ええ、おなかも空くし、眠くもなるしね」
結局のところ、今日はここまでで打ち切りになった。さあ、これから俺の生活は一体どうなるんだ??
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