表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
94/220

#92

――シャワーを浴び終え、トレーニングウェアから私服に着替え終えたストロベリーは、バニラと共にロッカールームにいた。


そして彼女は不機嫌そうな顔で、何度も同じ話を口にし続けている。


「なあ、最悪じゃね? これから毎日イジメられんだよ。ったく、ロッキーロードのバカが死ななきゃ楽に暮らせてたのに。マチャの家に来てからマジ最悪」


「だから、その問題の解決は簡単だろ。オレたちが早く強くなればいいんだ」


「そんないきなり人が変われるわけねぇじゃん。相変わらずバカだなぁ、アンタは」


ストロベリーが楽観的なことを言ったバニラに呆れていると、そこへストロベリーの次にシャワールームへと入ったダークレートが現れる。


一緒に汗を流したのであろう。


小熊のカカオがタオルに包まれて、ダークレートの胸で抱かれていた。


「来たか。じゃあ帰ろう」


「えッ!? アンタ……。まさか汗だくのままで帰るつもり?」


「……? そうだけど」


不思議そうにダークレートを見るバニラ。


そんな汗臭い彼を見て、ダークレートが声を張り上げる。


「シャワー浴びろバカッ!」


「クセェんだよ!」


ダークレートに続き、ストロベリーも怒鳴り始め、カカオも顔をしかめて吠えている。


そんな二人と一匹に迫られたバニラは、小首を(かしげ)げると彼女たちに言う。


「別に大丈夫だろ。こないだ風呂に入ったばっかだし」


「毎日入れバカッ!」


「クセェんだよ!」


その後、二人と一匹のあまりの剣幕(けんまく)に押されたバニラは、渋々ながらシャワールームへと向かった。


自分の手や身体を鼻でかぎながら、そんなに臭うかと不可解そうだ。


そんなバニラの背中を眺めながらダークレートが大きくため息をつき、カカオも彼女と同じように「ガウゥ……」と息を吐く。


「あいつ……。せっかく環境がよくなったのに、風呂ぐらい入れっての……」


「なぁに~ダークレート~。あいつのことが気になっちゃってるわけ~」


卑猥(ひわい)な笑みを浮かべてダークレートに訊ねるストロベリー。


カカオはそんな彼女の顔を見て怪訝(けげん)な顔をしている。


「別に……そんなんじゃ……」


「ハッハ~! なにちょっとからかっただけで照れてんだよ~。ひょっとしてあのバカのこと好きなったの?」


「だからそんなんじゃないって!」


「ムキなるところが怪しいね~。あんなネクラでトーヘンボクのなにがイイんだかあたしにはわからんけど。ま、応援してあげるよ」


否定しても相手を無視して自分の考えを言い続けるストロベリー。


ダークレートはそんな彼女に何を言っても無駄だと諦め、それ以上何かを口にするのを止めた。


それは、結局この赤毛の女の頭の中では、どんな説明をしても自分がバニラを好きだと変換されてしまうと思ったからだ。


「ホント、なんでもかんでも恋愛にもってくヤツはヤダねぇ。ねぇ、カカオ」


ダークレートはストロベリーがいようが気にせずに、カカオに愚痴(ぐち)を言った。


彼女の言葉を聞いたカカオは、「ホントホント」言いたそうに(うなづ)き、ガウガウと鳴き返すのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ