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#84

――ラメルがベヒナによって殺された頃。


バニラはショッピングモールのフードコートで、スパイシー·インクの幹部であるチゲと対峙していた。


すでにジェラートお手製のドリンクボトル――トランス·シェイクを飲んで全身に刺青のような模様が浮き上がっているバニラだったが。


チゲの格闘技術を前に、()(すべ)もない状況だった。


「嘘でしょ? こいつ……ドリンク飲んだバニラを相手に……」


傍でカカオを抱えているダークレートも驚きを隠せない。


だが、バニラは知っている。


これは前にもあったことだ。


こないだ始末した目の前のチゲと同じくスパイシー·インクの幹部ジャークと戦ったときと似ている。


いくら手を出しても相手に手が届かない。


さてどうすればいいのかと、バニラは考えようとするが――。


「いや、別にいいや。どうせオレがなにか考えたってうまくいかないし」


「何をブツブツ言っている? さっさとかかってこい」


「うん。かかってく」


チゲに答えたバニラは再び前へと出る。


拳を振り上げて相手の顔面へと放つ。


だが、届かない。


チゲの顔に当たる前に、彼の拳が自分の(ほお)に食い込む。


それに怖気(おじけ)づくことなく、バニラはさらにスピードを上げて腕を振り回すが。


チゲはまるで鳥の群れを一匹ずつ撃ち落とす狩人のように、バニラの顔面を正確に打ち抜いていく。


次第に()れ上がっていくバニラの顔。


明らかに彼のほうがチゲよりも速く動いているというのに、すべての攻撃が止められてしまっていた。


「なんで!? なんで当たらないんだよッ!?」


傍で見ていたダークレートが叫ぶと、彼女の腕に抱かれたカカオも大声で鳴いている。


そして、ついにバニラは倒された。


糸の切られたマリオネットのようにバタンとその場に屈した。


チゲはそんなバニラの頭を踏みつけると、彼に(つば)を吐きかけた。


「こんな雑魚(ざこ)にジャークの馬鹿が()られるはずがない。きっと汚い手を使ったんだな」


踏む力を強め、バニラの顔を歪ませていくチゲ。


その表情は怒りに満ち溢れていて、ただでさえ目つきの悪い彼の両目がまるで鬼のようになっていた。


「考えるに、あいつの家族を人質にとったのだろう? でなければ、あいつがお前のような子供(ガキ)に殺られるはずない」


「なんで……」


「うん? なんだ? まだ口が()けるのか? ド素人が。そのタフさだけは認めてやる」


「なんで……オレのパンチが当たらないんだ……?」


頭を石ころのように踏まれ、(うめ)くように言葉を吐き出すバニラは、どうして自分の攻撃がチゲに当たらないのかがわからないようだ。


そんな不可解そうに屈するバニラに、チゲは言う。


「わからんならそれがお前の限界だ。楽には殺さん。自分で殺してくれというまで責めて責めて責め抜いてやる」

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