#75
――マチャがラメルの家で飲んだ次の日。
バニラ、ストロベリー、ダークレートは、小熊のカカオを連れて街へ買い物に出ていた。
外の陽気が気持ちいいのか、カカオは嬉しそうに鳴いている。
「あーダル……。あーマジでダル……」
だが、そんなカカオとは違ってストロベリーは不機嫌そうだった。
それもそのはず。
何故ならば彼女たちは、せっかくの二連休を自分の部屋の整理整頓や消耗品の買い出しを命じられたからだ。
「文句ばっかいうなよ。こっちまで気分が悪くなる」
いつまでも顔をしかめているストロベリーのことを、ダークレートが注意した。
そう言われたストロベリーは、彼女のことを睨みつけると、すぐに振り返って前を歩いて行く。
「はぁ、ヤダヤダ。これだから人間はイヤなんだよ。ねぇ、カカオ」
ダークレートはそう言いながらカカオを抱き上げ、そのフサフサの毛に頬擦りする。
そんな彼女たちの後ろを歩いていたバニラは、二人のことなど気にせずに遠くのほうを眺めていた。
「なあ、買い出しって、一体なにを買うんだ?」
「あん? バカかお前は? マチャが消耗品って言ってただろうが。ったくあの女。人を働かせて、今頃ラメルのヤツとやりまくってんだろうなぁ」
バニラは前を向いて二人に訊ねると、ストロベリーが苛立ちながら答えた。
どうやら彼女は、買い出しを自分たちに押し付け、ラメルの家に一泊したマチャが許せないようだ。
そんなストロベリーにバニラが続けて訊く。
「消耗品ってなんなんだ?」
「はッ?」
「へッ?」
ストロベリーが口をあんぐりと開け、ダークレートも彼女と同じ顔になっていた。
二人は消耗品もわからないのかと、白髪の少年を見て呆れている。
「お前、そんなんでよくこれまで生きて来れたな……」
「消耗品ってのは、たとえばティッシュとかトイレットペーパーとか、あと洗剤とかだよ。ようは使うたびに減ったりなくなったりする物のこと」
ダークレートが説明すると、バニラは「あぁ、そういうヤツのことか」と、返事をした。
そこから、バニラはさらに二人に訊ねる。
どうして同じスラムで育ったはずなのに、ストロベリーとダークレートは多くのことを知っているのかと――。
一体どこでそういうことを覚えたのだと――。
まるで幼い子供が両親や兄、姉に質問するように訊く。
「ま、あたしは天才だからね~。人に教えてもらわなくてもわかっちゃうんだな~」
「嘘つけ。どうせモカとかにサニーナップから教えてもらったんだろ」
「はッ!? チゲーし! むしろあたしが色々教えてやったって感じ? いや~あいつらってあたしがいないと何もできないからさ~」
そこから嘘か実か。
ストロベリーはいかに自分が物知りかを語り始めた。
ダークレートはそんな彼女に辟易し、カカオもウンザリした様子でガクッと顔を落としている。
「いや、そんなことじゃなくて、オレはお前らがどこでそういうことを覚えたのかを聞きたいんだけど」
「あん? お前さぁ、女の話くらい最後まで聞けよ。せっかくこれから話してやろうってときにさ。女ってのは途中で話を止められるのが一番イヤなんだぞ」
「それってお前だけじゃないのか?」
「ケンカ売ってんのッ!?」
道端で言い合いが始まる。
とはいっても、ストロベリーが一方的にバニラをまくし立てているだけだが。
ダークレートは彼女を止める気も起きず、ただその場で立っていた。
「はぁ、人間は愚かだ……。ねぇカカオ」
ガウと鳴いて返すカカオ。
そんな彼女たちが、人の迷惑も考えずに道の真ん中で揉めていると、それを止めに入って来る人物がいた。
「コラコラ、こんなとこで喧嘩しない。って、ダークレート? あんた何してんの?」
それは、ダークレートの知り合いの女性――闇医者のクリムだった。




