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#74

それから二人はスーパーマーケットへと行き、カートに食材とアルコールを乗せ、それらを購入。


先に言っていた通り、酒は日本酒――大吟醸(だいぎんじょう)


後は昼食と、もう買い物へ行く気がないのか夕食用の食材やつまみ類などを大量に買い込んだ。


両手にパンパンに詰まったレジ袋を持って、ラメルの住むアパートに着くと、マチャが早速料理を作り始める。


勝手知ったる他人の家というか。


どこに調理器具や調味料があるのかを把握している彼女は、家主のラメルに訊ねることはなく料理を完成させた。


もちろんラメルも彼女を手伝った。


マチャがメインの料理を作っているときに、彼は彼女の横で簡単なつまみを作る。


メインの料理は照り焼きチキンで、半熟煮卵、温野菜のバーニャ·カウダと切り分けたバケットがテーブルに並ぶ。


「それじゃ、カンパーイ」


「乾杯」


互いに向き合って腰を下ろし、ラメルの声でグラスを合わせ、それに注いだ大吟醸を飲みながら昼食を口へと運ぶ。


マチャとラメルが住むこの人工島テイスト·アイランドは、基本的に寒い時期のほうが長いので、住民たちには暖かい料理が好まれる。


出来立てで熱々の料理が、体内から冷えていた二人の身体をゆるませていく。


「かぁ~やっぱマチャの作るメシは旨いや」


「そうか? こんなもん、いつも作っているだろう」


それから二人はどうでもいい話をしながら、テレビを付けて映画を観る。


ラメルが古い映画が好きなのもあって、宅飲みのときはいつも彼が選んだ作品をつけっぱなしだ。


どうやら今回ラメルが選んだのは、男女のバディもののアクション映画だった。


「なあ、ラメル」


「んあ、なんだ?」


「クマってフツー何を食べるんだ?」


「う~ん、シャケとかじゃないの?」


「お前、テキトーすぎ……」


その後も二人はダラダラと会話をしながら、ハッピーエンドが続く映画ばかり流し、気が付けば時間は夜。


そしてラメルは、うつらうつらとまるで振り子のように頭を動かしながら座ったまま眠っていた。


一方でマチャはというと、腰を上げてキッチンで今度は夕食を作り始める。


「うん? あ、わりぃ、寝てたか俺……?」


「気にしなくていい。今作ったけど、夕食は食べるか? 眠いなら寝てていいぞ」


作った夕食をテーブルへ置いた音で、ラメルが目を覚ますと、マチャは訊ねた。


ラメルは首を左右に動かしてゴキゴキと鳴らすと、まだ眠たそうな両目をマチャへと向けて「食べる」と答える。


すでに昼食で食べた料理の皿はマチャによって下げられ、残っているのはポテトチップスやチョコレートと、酒の入ったグラス二つ。


新しくテーブルに乗せられた料理は、鶏むね肉のねぎ塩炒め、肉じゃがで、ライスやパンはなく、野菜すらなかった。


ラメルは寝起きの状態で、パクパクとマチャの料理を口へと放り込んでいく。


そんな彼のことを、マチャはほろ酔いで(かす)む目でボーと眺めていた。


「なんだよ、人のことそんな見つめて? もしかして、今さら俺の魅力に気が付いたのか?」


「言ってろ、バカ……」


じっと見つめてくるマチャに、ラメルはおどけて様子で声をかけた。


そんなお調子者の彼に、マチャは静かに答える。


いつもの二人のやりとりだ。


そしてそのときのマチャの顔もまた、普段の彼女からは考えられないほど穏やかな笑みを浮かべているのもいつも通りだった。

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