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#5

ストロベリーはそう言うと、あっけらかんとした様子で歩き出した。


周囲にいた者たちは、喧嘩(けんか)でも起きたのかとざわついていたが。


歩き出したストロベリーを始め、誰一人気にせずにVIPルームへと向かって進んでいく。


彼女たちは見るからに十代の少年少女。


だが、ナイトクラブの出入り口には私設警備員がいる。


入場の際には身分証明書の提示を要求するはずだ。


そう誰もが思ったのと、さらにその顔や肌に見える禍々(まがまが)しい刺青のような模様に恐れたせいか。


店員すら対応することはなかった。


ストロベリーたちがVIPルームの前へと辿り着くと、さすがに店員がやって来る。


おそらくは会員制なのだろう。


しかもすでに他の客が使用しているのもあって、中へ入ろうとしていた彼女たちを止めてきたのだ。


「なに? 別にいいっしょ」


ストロベリーはそう言いながら店員の胸元を掴み、まるでゴミ箱に鼻をかんだテッシュを投げる捨てるかのように放り投げた。


先ほどサニーナップがナンパしてきた男を殴り飛ばしたときと同じで、店員が色合いの濃い壁に叩きつけられる。


「あんまり派手にやると後で怒られるよ」


「あん? ヘーキヘーキ。どうせ数秒で終わるんだから」


ストロベリーは注意してきたダークレートに適当に返事をすると、VIPルームの扉を蹴り飛ばした。


扉は最初から鍵などかかってなかったかのように開き、中にいた数名の男女が一斉に彼女たちへ視線を向ける。


そんなことなど気にせずに、ストロベリーたちはVIPルームへと歩を踏み入れた。


「あーいたいた。なーんだぁ、ずいぶんと少ないじゃないの」


「なんだてめえらはッ!?」


その中の一人の男が、ソファから立ち上がってモカに向かってきた。


モカは「ヒィッ!」と(ひる)んだが、彼女の身体を掴もうとしてきた男のことを振り払う。


振り払った手が男の胸に直撃すると、彼はそのまま設置してあったガラスのテーブルへと吹き飛ばされた。


それを見ていた女性たちが悲鳴をあげると、ダークレートが特殊警棒でVIPルームの壁を叩いた。


扉が開いて流れてきた大音量の音楽に負けないほどのボリュームの破壊音に、女性たちは(おび)えて黙る。


そんな空気の中、リーダー格の男が静かにストロベリーたちに言う。


「お前ら、俺がスパイシー·インクの人間だと知っていてこんな真似してんだろうな?」


髪を染め、年齢に似つかわしくないアクセサリーだらけの中年男性。


その黒光りした肌を見て、ストロベリーがわかりやすく顔をしかめる。


「うわぁ、若作りおっさんだ。いかにも日サロに通って加齢臭(かれいしゅう)をごまかすために香水臭いし……。あたし、マジ無理……。このおっさんに触りたくない……」


嫌悪(けんお)を隠さずにそう言ったストロベリー。


すると、白髪の少年――バニラが彼女を押しのけて前に出る。


「ちょっと、いきなりなんなの?」


「お前が無理ならオレがやるよ」

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