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#45

ハンドルを操作する者がいないフルサイズバンは、目の前に建物に突っ込み、車内にいたストロベリーに衝撃が走った。


後部座席から運転席まで吹き飛んだ彼女だったが。


運良くどこも怪我などもなく、すぐに車から脱出する。


「クソッ! 最後まで使えないオッサンだったなッ!」


自分が死んだことさえ気が付くことなく、ロッキーロードの顔は両目を見開いたままだった。


そんな痛みも感じることなく死んだ彼の死体に悪態をつき、ストロベリーは一刻も早くこの場から去ろうとする。


だが、建物に追突したことで車が止まったためか。


警備服姿の男たちが、遠くからこちらに向かって来るのが見えた。


スパイシー·インクの社員たちだ。


今のストロベリーはどこにでもいる十代の少女と変わらない。


トランス·シェイクがない現状では、囲むように向かって来る社員たちの包囲を抜けるのは絶望的だ。


「ドリンクさえあればなんとかなったのに、ホント使えないオッサンだよッ! サニーナップのヤツはすぐに殺されちゃったしモカも役に立たないし、こうなったら……」


自分一人では、この場から逃げ出すことが無理だと思ったストロベリーは、先ほどモカを助けに戻ったバニラのもとへと走った。


彼女にはもう、トランス·シェイクで身体能力が向上しているバニラしか頼れる人物がいない。


それでもかなり生き残る確率は低いうえに、これまで(さげす)んできたバニラにすがることは、ストロベリーにとって屈辱(くつじょく)ではあったが。


この状況でなりふり構うことも、四の五も言ってはいられないと、バニラとモカのいるところまで駆けていく。


「もうマジで最悪ッ! なんであたしの周りは無能ばっかなんだよッ!」


そこら中から銃声が聞こえ、周囲からはライオットシールドと警棒で武装したスパイシー·インクの社員たちが向かって来ている。


もうどう見ても逃げ切ることは不可能。


逃げるための車も失い、戦える力もない絶望的な状況である。


だが、それでもストロベリーは諦めることなく、命の危機にさらされながらもひた走る。


「ヤダッ! ヤダヤダヤダヤダッ! あたし、こんなとこで死にたくいぃぃぃッ!」


半泣きの顔で声を張り上げたストロベリーは、ようやくバニラとモカのもとに辿り着いた。


二人は側にあったトラックをバリケードとして、撃たれ続けている弾丸から身を隠していた。


「おいバニラ! なんとかしろッ! あたしだけでも逃げれるようにしろッ!」


ストロベリーはロッキーロードが死んだことは伝えず、車を失ったことを二人に話すと、早くなんとかするようにバニラに向かって(わめ)き始める。


助けてほしいというわりにはずいぶんと偉そうな態度で、明らかに上から目線の言い方だった。


「それは指示とは違うな。オレは捕まった三人を助けるように言われてる」


「なにが指示だッ! サニーナップが殺された時点でもう終わってんだよそれはッ! 今はともかくあたしを助けろッ!」


声を張り上げて自分だけでもこの場から逃がせと叫ぶストロベリー。


腰を抜かして動けないモカは、そんな彼女を見てから、少し離れた位置にあるサニーナップの死体を見てまた涙を流している。


「まあ、言われたように助けるつもりだけど……。いいからちょっと黙ってろよ」


バニラはストロベリーにそう言うと、身を隠していたトラックの(かげ)から出て行った。

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