#43
サニーナップはバニラに礼をいうと、これまでのこと――今まで彼に冷たくしていたことを謝罪し始めた。
店の仕事をバニラ一人に押し付けたことや、何かと当たりがきつかったことを素直に詫び、これからは改善していくと言って笑顔を見せる。
「お前が来てくれるなんて思わなかったよ。……俺さ、怖かったんだ。死ぬかもしれねぇって……。でも、お前のおかげで――」
「あ、そう。気にしなくていいよ。俺は言われたことをやっただけだから」
友好を深めようとするサニーナップに、バニラは彼の言葉を遮って返事をした。
そこにはサニーナップたちに対する感情はなく、今口にした言葉通りに指示があっただけで、ジェラートから言われなければ助けには来なかったという冷たさが感じられた。
そんなバニラの態度に、サニーナップは顔をしかめた。
せっかくこちらが礼と謝罪をしているのにと、苛立っている表情だ。
だが彼は、助けに来てくれたのは事実だと、すぐに気持ちを切り替える。
「相変わらず愛想のないヤツだな。まあいい。ともかくこれからは俺もちゃんと店を手伝うぜ」
「わ、わたしもッ!」
そこへモカも声を張り上げて会話に入ってきた。
彼女もまた今までのことを謝り、サニーナップと同じく、これからはサボらずに店を手伝うことを誓う。
「わたしもサニーナップくんと同じだよ……。これからは頑張るから……。もう、バニラくん一人に仕事を押し付けたりしないからッ!」
めずらしく自己主張をするモカ。
その様子を見ていたストロベリーは、そんなサニーナップとモカに苛立ちながら、ロッキーロードの乗る車――フルサイズバンのドアをドンドンドンとノックした。
突然車内に大きな音がしたせいか。
ロッキーロードが驚きながら彼女やバニラたちの姿を確認し、ドアのロックを解除する。
「いきなり叩くな! スパイシー·インクの奴らかと思ったじゃないかッ!」
不摂生でたるんだ身体を震わせながら、いの一番に後部座席に乗り込んできたストロベリーに声を張り上げるロッキーロード。
ストロベリーはそんな彼を無視して、不機嫌そうに座席に腰を下ろす。
そんな彼女の態度が気に食わなかったロッキーロードは、礼もないのかと彼女に声をかける。
「なんだその態度は? 人がせっかく助けに来てやったのに」
「あん? それがアンタの仕事でしょ? いいからさっさと車出してよ」
フンッと鼻を鳴らして返事をしたストロベリーに、ロッキーロードはさらに苛立った。
だが、今はそんなことを気にしているときではないと、車のエンジンをかける。
(なんなんだよ、こいつ……。わざわざ来てやったのに……。これだから学校も行ってないような子供は嫌いなんだ)
ストロベリーに対し、頭に来たロッキーロードは思う。
しかし、これでジェラートに頼まれた子供たちの回収は済んだ。
きっと彼女は喜んでくれるはずだと。
ムカつく子供どもだが、自分とジェラートの大きな目的のためには必要な駒であると、苛立つ気持ちを抑える。
この人工島――テイスト·アイランドを、自分とジェラートで変えるのだ。
そして、この島に自分と彼女の楽園を作る。
ロッキーロードはそう考えながら、卑猥な笑みを浮かべる。
エンジン音が鳴り、ロッキーロードが車の外にいるバニラたちに声をかける。
「おいッいつまで話してんだよッ! さっさと車に乗れッ!」
彼が声を張り上げて車に乗るように急かしたその瞬間――。
けたたましい銃声が鳴り響いた。




