#38
サニーナップは飲料後、全身を上下に震わせ始める。
それは、まるでバーテンバーがカクテルを作るときに振るシェイカーのような動きで、目の瞳孔が開き、その全身には刺青でも入れたかのような模様が浮かび上がる。
これはトランス·シェイクによる効果だ。
そして、サニーナップは鉄格子を両手で掴み、力任せに引っ張って牢屋から出て、ストロベリーとモカがいる檻をこじ開ける。
「これでいいだろ。早く逃げようぜ」
少しやけっぱち気味に言ったサニーナップ。
ストロベリーはそんな彼にニッコリと微笑みを返した。
「そう、それでいいんだよ。それでこそあたしの見込んだ男ッ!」
嬉しそうにしているストロベリーとは反対に、モカのほうは怯えていた。
それは先ほど話していた――。
サニーナップ一人で、トランス·シェイクを飲んでいない足手まといの二人を連れ、ここから逃げられるのかという恐怖からの震えだった。
ストロベリーはそんな彼女を一瞥すると、その肩をバシバシ叩く。
そんな顔をしてたら逃げられるものも逃げられるなくなると、苛立ちながら発破をかけていた。
「ほら、ビビッてんじゃないよ」
「そ、そうだよね……。ダメだよね、こんなんじゃ。サニーナップくん……大変だと思うけど、頑張って……」
モカの頼りない激励に、サニーナップは静かにコクッと頷くと、地下室の階段へと歩き始めた。
未だにストロベリーとモカを守りながら、拳銃を持つスパイシー·インクの社員たちの中を抜け、ここから脱出できるのか――。
彼もまたモカと同じ不安を抱えながら、自信なさそうに前を向いていた。
「じゃ、じゃあ、行くぞ」
そんな自分の自信のなさを振り払うように、二人に声をかけるサニーナップ。
モカがそんな彼の背中にコクッと頷き、ストロベリーは少し呆れながら「はいはい」と返事をした。
そして、ストロベリーは思う。
やはりこの男は使えない。
明らかに怯えている。
せいぜい敵の注意を引きつけさせ、モカを盾に使って自分だけでも逃げようと考える。
(はぁ、ダメだねコイツは。まあ、うまく逃げれそうならついて行っていざとなったら見捨てよう)
そんなストロベリーとは逆に、重圧を感じながらも、サニーナップはせめて彼女だけは助けたいと考えていた。
モカには悪いが。
彼の心情としては、なんとかストロベリーだけは逃がしてあげたいと。
「……やるんだよ。俺がやらなきゃなんねぇんだ……」
自信こそないが。
サニーナップは、まるで自分に暗示でもかけるように呟き、己を奮い立たせていた。
これから銃弾の雨の中へと飛び込む、仲間の少女二人を守りながらここから出るのだと。
震えていた足に力を込め、開いていた手をグッと握る。
「二人とも、俺の後ろから離れんなよッ!」




