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#34

それからバニラは、店にスパイシー·インクが来たことをロッキーロードに伝えるため、彼のいるマンションへと向かう。


警備服姿の人間は店の外にはおらず、どうやら中に入ってきた者たちだけだったようだ。


特に問題なく街中を走り、目的地まで辿り着く。


「ロッキーロード、ちょっと話があるんだけど」


マンションへと戻ったバニラは中に入ると、ロッキーロードがいる部屋の前に立って声をかけた。


今はジェラートから任されていた三号店の非常事態なのだから、慌てて中に入って報告しそうなものだが。


バニラにはまったく動揺した様子なかった。


ロッキーロードの部屋からは、彼とは無縁と思われる可愛らしい少女の声が聞こえ来る。


しばらくガサガサと中で人が動いている音が聞こえ始めると、ようやくロッキーロードが返事をしてきた。


「なんだよ? 今いいところなんだぞ。というかお前、店はどうした?」


「その店の話だよ。大事な話なんだけど、開けるか出てきてくれない?」


そう言い返したバニラ。


だが、ロッキーロードは部屋から出て来ず、そのバニラのいう店の話というものが何なのかを訊ねた。


バニラは特に感情を表に出すことなく、ただ淡々とドアの前で説明を始める。


「店にスパイシー·インクの人たちが来たんだよ」


「スパイシー·インクの連中が? 客として来たのか?」


「ううん、いきなり拳銃を向けてきた」


その言葉の後、部屋の中がドタバタと大きな音が鳴り始めた。


そして部屋のドアが開き、ロッキーロードが慌てた様子で出てくる。


「バカッ!? なんですぐにそのことを言わないんだよお前はッ!」


「だって、マンションではうるさくするなって言ってたし。あと、何があっても勝手に部屋に入るなって――」


「あいつらが店に来たんならもうここも安全じゃないッ! ちょっと待ってろッ! すぐに着替えて出るぞッ!」


バニラの言葉を遮って大慌てで声を張り上げたロッキーロード。


昨夜のナイトクラブを襲撃したバニラたちのことが、スパイシー·インクにバレたのか――。


そう思いながらもロッキーロードは服を着替え、ともかく今は彼らに見つからないようどこかに身を隠さなければと考えていた。


「他のヤツらはどうすんの?」


「いいんだよあいつらのことなんかッ! いいからお前は俺について来いッ!」


着替えと大きなリュックサックを背負ったロッキーロードは、バニラのいう他の連中――。


ダークレート、ストロベリー、サニーナップ、モカの安否など気にせずに、マンションから出て行く。


そして、駐車場に停めていた車――フルサイズバンにバニラと共に乗り込む。


エンジンをかけてからアクセルを踏み、片手でハンドルを動かしながら、もう片方の手でスマートフォンを操作する。


そんな(せわ)しないロッキーロードの姿を見て、バニラが訊ねる。


「誰にかけるの?」


「ジェラートさんだよジェラートさんッ!」


「そっか」


すでにバニラの言葉など耳に入っていないのだろう。


ロッキーロードは、愛想なく返事をしたバニラのことなど気にも留めない。


「クッソ、なんでこんなことになるんだぁ……。あぁぁぁッ!! なんでだよッ!? なんで俺ばっかりッ!」

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