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#32

――ストロベリーがスパイシー·インクの幹部であるジャークの前で連れて来られてから数時間後。


バニラはホワイト·リキッド三号店での日課である掃除を終え、店内で(ほう)けていた。


すでにお昼時になっていたが。


いつものように客は来ずに、彼はただひたすら時間が過ぎるのを待っている。


これはホワイト·リキッドがスイーツ&バーだからというわけではない。


実際にジェラートがマスターをやっている一号店や、マチャが任されている二号店はお昼時なれば客がそれなりに入っている。


夜になれば繁盛(はんじょう)しているし、これはどう見ても三号店を任されているロッキーロードに問題があるせいだった。


しかし、バニラにはそんなことは理解できず、まあこんなものかと思っていた。


たまに、朝に来た高校生の男女たちのように、なんとなく来客があったりはするが。


格好もみすぼらしく、風呂もろくに入らないバニラを見ては誰もが注文をする前に店を出て行ってしまう。


まあ、たとえ注文されても、バニラにはホワイト·リキッドのメニュー――料理など作れない。


彼にできる料理はせいぜい、ロッキーロードに渡されたマニュアルを見て、冷凍されたものを出して皿に盛って出すことくらいだ。


もし仮にバニラが料理が作れて店に多くの客が来たとしても――。


三号店で働いているはずのロッキーロード、ダークレート、ストロベリー、サニーナップ、モカがここにいることはないので、バニラ一人では店は回らないだろう。


そんなピカピカに磨かれた三号店内で、薄汚れたバニラがボケッとしていると、店の扉が開いた。


現れたのは警備服を着た集団――。


この人工島テイスト·アイランドを仕切っている警備会社スパイシー·インクの者たちだ。


バニラがいらっしゃいということもなく、ただ現れた客のことを眺めていると、彼らは突然拳銃を向けてくる。


「白髪の薄汚い少年……。こいつがバニラだな」


その集団の先頭にいた男が確認するようにそう言うと、バニラについてくるように言い始めた。


いきなり拳銃を突き付けられ、連行されそうになったバニラだったが。


動揺する様子などなく、手元にあったマニュアルを見始めた。


このマニュアルはロッキーロードが彼に渡していたものの一つで、その内容はもしも店に強盗が入ったときの対応である。


相手はどう見えても強盗ではなく、スパイシー·インクの人間なのだが。


バニラにとってはどちらも同じだったようだ。


「えーと、強盗が来たら逆らわずにレジのお金を渡すか……。または相手の目的が金銭目的ではなく、店員の殺害や誘拐だった場合はトランス·シェイクを飲む……」

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