#30
ストロベリーが何を言おうが、警備服姿の集団は彼女を拘束。
カプセルホテルまで乗ってきたであろうトラックの前に、強制的に運んだ。
そのトラックにはやはりというべきか。
この人工島テイスト·アイランドを仕切る警備会社――スパイシー·インクのロゴが書かれていた。
それからトラックの荷台に放り込まれたストロベリー。
そこには聞いていた通り、サニーナップとモカ二人もいた。
恐怖に震えるモカと、おそらくかなり反抗したのだろう顔に青あざができたサニーナップが気を失っている。
「フゴッ! フゴフゴッ!」
ストロベリーが口にガムテープを貼られた状態で喚くが。
モカはもういろいろ諦めているのか。
震えながら彼女のことを見返しているだけだった。
ストロベリーがモカに何を言おうとしていたのかというと――。
自分の荷物はどうしたのかということだった。
それはモカに預けていた荷物に入っているホワイト·リキッドを経営しているジェラートのお手製のドリンク――。
トランス·シェイクさえ飲めば、飲料後には全身に色のついた模様が現れ、人知を超えた腕力を手に入れ、あり得ない速度で動けるようになる。
その状態にさえなれば、こんな手枷と足枷など破壊して簡単に脱出できるのだ。
だが、モカの側にはストロベリーが預けたリュックサックもなく、彼女の自身の荷物もなかった。
もちろん気を失っているサニーナップの物もない。
正直、トランス·シェイクのない状態での脱出は絶望的だった。
「フゴッ! フゴッ! フゴゴッ! (おいモカッ! アンタのせいだぞッ! アンタが荷物をちゃんと持っていないからッ!)」
ストロベリーはモカに向かって喚き続け、この状況をすべて彼女のせいにしていた。
だが今のモカは、普段なら何度も謝るところが、ストロベリーの言葉が耳に入って来ないほど意気消沈してしまっている。
愚痴を聞いてもらえない。
いや、これでは埒が明かない、話にならないと思ったストロベリーは、次に気を失っているサニーナップに向かって喚き始める。
「フゴッ! フゴゴッ! フゴフゴゴッ! (アンタもいつまで寝てんだッ! 早く起きてあたしを助けろよッ! 男は女を守るもんだろッ!)」
だが、ストロベリーがいくら喚こうが。
サニーナップは目覚めない。
そんな仲間たちの状態に、ストロベリーはさらに苛立った。
このままじゃ最悪殺される。
そんなときに本当に使えない連中だと。
「フゴッ! フゴフゴッ! フゴゴォォォッ!(クソッ! マジで使えねぇなアンタらッ! あぁッ! このままじゃさんざん輪姦されて殺されるぅぅぅッ!)」
モカが絶望していても、ストロベリーは意気消沈しなかった。
拘束された手足をバタバタと動かし、まるで生きのいいマグロのようにバタバタと暴れ始めていた。
そして、そんなストロベリーの意味のない抵抗も空しく――。
トラックは停車し、再び警備服姿の集団が彼女たちを運び始めた。




