#25
――あるビル内のオフィスで、スーツ姿の者たちが集まっていた。
皆がソファーに腰かけ、不機嫌そうに何かを待っている。
ここは人工島ティスト·アイランドを仕切る警備会社スパイシー·インクの持つビルで、集まっている者たちはその幹部らだ。
昨日の深夜にあった彼らの仲間が襲撃されたことで、こうして顔を合わせて事件の詳しい内容を状況を知るために現場から連絡を待っている。
「ったく、どこのどいつなんだよ。うちに盾突くなんて正気の沙汰じゃねぇだろ」
しばらくして、一人の男が口を開いた。
その男は褐色の肌を持ち、二メートルは超える身長で丸太のように太い手足を伸ばして、顎に髭をはやしている。
スパイシー·インクの幹部の一人――ジャークという男だ。
ジャークは持参したハーブ、スパイス、チリペッパーがたっぷり使われているグリルチキンを頬張りながら、他の幹部らへ声をかけた。
彼が食べているチキンの強烈なスパイスの香りが部屋に充満し、皆がその刺激臭に顔をしかめている。
「お前、こんなときによく食えるな」
そんなガツガツチキンを食べるジャークに、この幹部らの中で唯一の女性が呆れながら声をかけた。
彼女の名はべヒナ。
黒髪を一つに束ね、それを三つ編みしている、冷たく細い目をした妙齢の女性だ。
ベヒナはジャークと同じくスパイシー·インクの幹部の一人で、元はテイスト·アイランドの警察署に務めていた経歴を持つ。
「あん? ストレス食いだよ、ストレス食い。食わなきゃやってられねぇだろ?」
「そう言ってるけど、お前は年中食ってばかりじゃないか? しかもチキンばっかり。だからコレステロール値で引っかかるんだよ」
「そういうお前はどうせ朝昼晩と火鍋だろ? イカれてるぜ。あんな血の池みてぇな鍋が好きなんてよ。俺はあんなもんに食欲が湧かないねぇ」
「火鍋をバカにするな。あれは肉、魚、野菜とバランスよく取れる最高の調理法なんだ。それと、ろくに野菜も取らないでチキンばかり食べてるお前は、そのうち鶏になるぞ」
「じゃあ俺が鶏になったらお前が食ってくれよ、ベヒナ。お前の赤黒いあそこに、俺のたくましいモノを存分に味わあせてやる」
ジャークはベヒナの身体を舐め回すように見ると、嫌らしい笑みを浮かべた。
そして、すぐに手元の箱――チキンに視線を戻して再び頬張り始める。
「相変わらず下品な奴だ。これだから野菜を食わん奴は困る」
「うっせぇ、野菜なんて食わなくても生きていけんだよ」
「二人ともその辺にしておけ」
軽く言い合いを始めていたジャークとベヒナに、ある男が声をかけ、続けて黙るように言った。




