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#188

《そんなの今さらじゃない。本当はわかってるんでしょ?》


「……復讐か。くだらん」


レカースイラーはそう言い返すと、電話を切ろうとした。


だが通話を切る瞬間に聞こえてきたジェラートの言葉に、彼は耳に当てていたスマートフォンを落としてしまう。


その言葉とは――。


《今、目の前にいる白髪の少年はあなたの子よ》


バニラがレカースイラーの息子だという内容だった。


一瞬だけ我を忘れたレカースイラーだったが。


すぐに冷静さを取り戻し、泣いているバニラへと近づいていく。


「おい、小僧。訊きたいことがある」


そして、声をかける。


しかし、バニラは答えない。


(うつむ)いたまま屋上の床に(ひたい)を付けて、ただ(うめ)いているだけだ。


レカースイラーはそんなバニラのことを、首根っこを掴んで吊るすように起こさせる。


「いつまで泣いているんだ。いいから私の問いに答えろ」


「ダークレート……ダークレートがぁ……」


焦点の合わない瞳で、殺された黒髪の少女の名をブツブツと呟いているバニラ。


レカースイラーは、それでも構わずに声を荒げる。


「お前の母親の名はッ!? それと生まれたときからずっとスラムに住んでいたのかッ!?」


「母さん……? 母さんは……どっかいった……」


「名前を言えッ!」


「知らない……」


「くッ!?」


レカースイラーはそっとバニラを床に下ろすと、彼の前に腰を下ろした。


胡坐(あぐら)の姿勢で両腕を組み、何かに苛立ちながらも生気の抜けた白髪の少年のことを見据える。


「……ずっとスラムにいたのか。そこであの女に拾われたのだな」


それからレカースイラーの表情が変わり、彼は申し訳なさそうな顔で訊ね始めた。


その白髪は生まれつきなのか。


これまでどうやって生きてきたのか。


父親を捜そうとはしなかったのかと、とても襲撃者三人を圧倒したこの人工島テイスト·アイランドの支配者とは思えないほど穏やかな口調で言葉を続けていく。


だが、バニラからの反応は薄かった。


バニラはなぜこの男は突然こんな話をし出したのだろうと、朦朧とした意識でボーとレカースイラーを見返しているだけだった。


それでもレカースイラーが言葉を続けていると、バニラの正気に戻す出来事が起きる。


「バ、バニラ……。なにやってんだよぉ……。そいつは……あたしらの敵だろ……。ダークレートを殺したんぞ、そいつはぁぁぁッ!!」


それは赤毛の少女――ストロベリーを声だった。


ストロベリーは腹部に日本刀が刺さったまま、血を吐きながらもバニラへと叫び続けた。


殺せ、目の前にいる男を殺せ。


今ダークレートの(かたき)を討てるのはお前だけだと、とても重傷を負っているとは思えないほどの覇気で怒鳴っている。


「そうだ、こいつは敵だ……。ダークレートを殺したんだ……」


彼女の叫び声を聞いたバニラは我に返り、目の前にいるレカースイラーへと飛び掛かる。


ストロベリーへと視線を向けていたレカースイラーは、まさかバニラが襲って来るとは思いしなかったのか、反応ができなかった。


「グガァァァッ!」


そして飛び掛かったバニラは、レカースイラーの喉元に噛みついた。

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