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#181

テイスト·アイランドの事実を知ったバニラ、ストロベリー、ダークレート。


あくまで敵の言葉だとわかっていながらも動揺は隠せなかった。


三人とも、特に島を良くしたいと思っていたわけではなかったが。


自分たちのしていたことが、まさか島の秩序を崩壊させようとしていたとは思わなかったのだ。


立ち尽くすバニラたちにレカースイラーは言葉を続ける。


「私はホワイト·リキッドを潰した後に、島の外へと勢力を伸ばすつもりだ」


三人から返事はない。


「そのためにも、お前たちのような覇気のある若者が必要だ。この島の人間は、皆無気力な連中ばかりだからな」


何も言わないバニラたち。


レカースイラーは座っていた玉座から腰を上げる。


「私と来い。それが、お前たちの望み――未来へと繋がる唯一の道だ。それともあの女に付き従って、いつまでも指示待ちでいるつもりか? それもいい。それならそれでその程度の人間だったと(あきら)めもつく」


そして三人へと歩み出し、その手を差し伸べる。


「だが、お前たちに自分の意志があるのならば、ここで私の手を取るべきだ。共に島を出て世界を変えよう」


それからレカースイラーは黙り、三人の返事を待っていた。


屋上に風が吹き、その音に紛れてカカオの鳴き声が聞こえている。


困惑しているかのようなその鳴き声は、まるで三人の気持ちを表しているかのようだ。


「でも、アンタの……スパイシー·インクのせいでラメルは死んだ……」


しばらくの沈黙の後――。


バニラが風の音に消えてしまいそうなほどの声で呟いた。


差し伸べた手を戻し、レカースイラーが彼に言う。


「それはこちらも同じだ。お前たちのせいでこちらも多くの幹部を失った。だからこそ、今――」


「だからってなんだよッ!」


バニラはレカースイラーの言葉を(さえぎ)って声を張り上げる。


レカースイラーの言葉は事実なのかもしれない。


この人工島テイスト·アイランドのことを考えれば、スパイシー·インクに入ったほうがいいのかもしれない。


だが、それでもそのせいで大事な人を失った。


これまで人間扱いされなかった自分に優しく声をかけてくれた人間を無くした。


この感情はどうすればいいのだと、レカースイラーへ喰って掛かる。


「だからそれは私も同じだと説明したはずだが?」


「同じじゃない……。ラメルみたいな人にはそれしか道がなかったんだ……。お前たちと違って選べなかったんだよ……。それに、オレを拾ってくれたジェラートさんや、いろいろなことを教えてくれたマチャやホワイト·リキッドの人たちのことを裏切れない」


「それがお前の答えか? そっちの二人はどうだ? 私の誘いに乗るか?」


身を震わせているバニラから、ストロベリーとダークレートへと視線を移したレカースイラー。


視線を向けられた彼女たちは、それぞれ自分の意見を口にする。


「アタシはそこまであの女に思い入れはないけど。少なくともアンタとお世話になった人を比べるようなことはしない」


「う~ん、やっぱあたしもダークレートと一緒かなぁ。島のことや未来とかなんてどうでもいいしね。それにいくらアンタが強くても今はあたしら三人だし。フツーに考えてホワイト·リキッド(こっち)のほうが優位だよね」


「そうか。残念だ……。では、三人ともこの場で殺してやる」

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