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#180

「それはもっともだな。だが、私が言っていることは事実だ」


ストロベリーは再び話し始めたレカースイラーの言葉に耳を(かたむ)けていた。


普段の彼女なら他人の話などに聞く耳を持たないのだが。


それほどレカースイラーの言葉に関心を持ったのだろう。


苛立ちも不快感も見せることなく、ただ彼のほうを見て立っている。


それは、先ほど反抗してみせたダークレートも、黙っているバニラも同じだった。


三人は、これまでレカースイラーに言われたこと――。


本当は自分が何をしたかったのか。


本当の自分の望みややりたいことはなんなのかを考えると、レカースイラーの言葉に興味を抱かざるを得なかったのだ。


「お前たちもうちの幹部たちと同じだ」


「あん? 同じってなんだよ」


「ジャーク、べヒナ、チゲ、リコンカーン、ボボティ、ウィング……。あいつらも最初は私を殺そうとした。それは今のお前たちと同じく、私を殺せば何かが変わると思ったからだ」


これまでバニラが戦ってきたスパイシー·インクの幹部たちの名をあげ、レカースイラーは感傷深そうな表情をした。


彼の言葉を信じるなら、幹部たちもまたスパイシー·インク――レカースイラーへと挑み、彼との関わりの中で自分が本当は何がしたかったのかを知ったという。


「あいつらは私の誘いにイエスと答えた。それは、自分の望みが私を殺すことではなく、この島のため――しいては自分のためになると思ったからだ」


「アンタは……アンタらは島を支配して自分たちだけがいい暮らしをしようとしてたんじゃないって言うのか……?」


これまで黙っていたバニラが、レカースイラーへと訊ねた。


それは、ストロベリーとダークレートも言おうとしていたことだ。


三人ともホワイト·リキッドで働くようになってから、ロッキーロード、マチャ、ジェラートとこれまで関わってきた大人たちから、スパイシー·インクが島を我が物顔で好きなようにしていると聞いていたからだった。


だがこれまでの話を聞いていると、事実は少し違っていたのかという疑問が生まれ、バニラはつい口にしていた。


「ジェラートから聞いたのか?」


「いや、オレの知っている大人はみんなそう言ってた……」


「それは、考えが浅いとしか言えんな。考えてもみろ。スパイシー·インクが現れる以前は、この島すべてがスラムのようなものだったんだぞ」


レカースイラーは、自分の会社が台頭する前のテイスト·アイランドの状況を話し始めた。


流れ込んできた移民を中心とした低所得者層を住まわせる為に政府が作った人工島。


しかし国からは満足な社会保障は与えられなかったため、居住者の生活は困窮。


また正規の移住者以外にも密入国者などが集まってしまい、結果的にスラム化が進行。


市民を守るはずの市政や警察は仕事などせずに、ただ考えも無しに好き勝手やっていた。


それを変えたのが、スパイシー·インクなのだと。


「表面だけをみれば、うちの会社が力づくで島を支配したと思うだろう。だが、そうしなければ今よりも酷い状態になっていたのは事実だ」


「嘘でしょ……? じゃあ、アタシたちのやってきたことって……」


ダークレートが唖然としながら言葉を漏らすと、レカースイラーが彼女へ言う。


「そうだ。むしろ島を悪くしようとしているのは、お前たちに命令しているホワイト·リキッドのほうだ」

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