#179
「お前たちの目的はなんだ? 言ってみろ」
「そんなのわかってんでしょッ! アンタを殺しに来たんだよ!」
今さら何を言っているんだとばかりに――。
ダークレートが怒鳴り返した。
彼女の言葉を聞いたレカースイラーは、肩を揺らすと笑みを浮かべながら返事をする。
「それはあの女の、ジェラートの目的だろう? 私が訊いているのは、お前たち自身の望みだ」
それからレカースイラーは話を続けた。
バニラたちはジェラートに言われるがままスパイシー·インクを襲い、自分たちが本当は何をしたいのかもよくわかっていないのに利用されている。
苦しいスラム街での生活から抜け、まともな住居や食事、衣服を与えられ、ただ食っていくためだけに生きているだけだと。
「考えたことはないのか? 本当に自分のやりたいことを? それとも私を殺すのが本当にお前たちの望みなのか?」
バニラたち三人は答えられなかった。
バニラはジェラートにスラムにいるときに拾われた。
ストロベリーやダークレートも今は亡きホワイト·リキッド三号店のマスターだったロッキーロードに誘われ、スイーツ&バーで働くようになった。
それは、ただ明日をもわからぬ生活から抜け出したかったからだ。
今レカースイラーが言ったように――。
自分が本当は何をしたいかなど、ましてや望みなんて言われても、三人とも考えたことなどない。
まともな衣食住が手に入ってそれなりに楽しければ、それ以外はどうでもよかったのだ。
ジェラートのような明確な目的――。
マチャを初め、他のホワイト·リキッドの従業員たちのような、この人工島テイスト·アイランドの浄化など考えたことない。
だが言葉に詰まりながらも、ダークレートがレカースイラーへ言う。
「別に、アタシはアンタを殺したいわけじゃないけど。でも、スパイシー·インクがなくなればこの島が良くなるって……みんなが住みやすくなるって聞いたから……」
「それはあの女の嘘だ。むしろスパイシー·インクがなくなれば、この島の状況はさらに酷くなる」
まるでダークレートの言葉を遮るように答えたレカースイラー。
ダークレートはその迷いのない言葉に、思わず怯んでしまった。
それは、彼女も自信を持ってスパイシー·インク――レカースイラーがいなくなれば島が良くなるということを、言葉で説明できないからだった。
ろくに考えず、ホワイト·リキッドの人間たちが言っていることを、そのまま口にしているだけだと思い、彼女は何も言い返せなくなる。
「あん? いきなりそんなこと言われても信じられないわけないでしょ? ましてやアンタは敵のボスじゃない?」
怯んだダークレートをフォローするように――。
次にストロベリーが口を挟んできた。
視線をダークレートから赤毛の少女へと移したレカースイラーは、彼女に向かって話し出す。




