表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
179/223

#175

レカースイラーは、標的を前にして動き出さないバニラに声をかける。


「私の部下はどうした? お前をここへ案内させるように言ってあったのだが?」


「部下? あぁ、あのハゲと金髪か。二人なら下で寝てるよ」


「それは、お前がやったのか?」


「うん。なんか社長に会わすまでもないとかいって襲ってきたから、ぶっ飛ばした」


バニラから事の顛末(てんまつ)を聞いたレカースイラーは、呆れてため息をついていた。


首を左右に振っては、右手で頭を抱えてぼやいている。


「全く……。皆、忠誠心が高いのは良いのだが、勝手なことばかりする。困ったものだ……」


「アンタも苦労してんだ」


親しみのこもった言葉を吐き出しながら、バニラはレカースイラーへと近づいていく。


それを見たレカースイラーは、向かって来る襲撃者の少年に視線を移す。


両者の目が合うと、二人とも互いに強く拳を握っていた。


「でも、オレはアンタを殺さないといけないんだ」


「ほう、そうか。ではやってみろ。言葉で人は殺せんぞ」


レカースイラーの返事を聞いた瞬間――。


バニラは一気に彼の懐へと飛び込んだ。


そして、握っていた拳をその土手(どて)(ぱら)へと放つ。


トランス·シェイクの効果で身体能力が向上しているうえに、今のバニラはマチャから戦闘技術を仕込まれている。


彼を止めることなど、普通の人間ではもはや不可能。


それは先ほど幹部二人――ボボティとウィングを一瞬で倒したことでも明らかだ。


彼ら二人の実力はスパイシー·インクの他の幹部らとほぼ同じ。


これまでにジャークやチゲを相手にし、トランス·シェイク使用時でも敵わなかったバニラが、それと同等の相手をいとも簡単に叩き伏せたのだ。


対するレカースイラーは、年齢的にすでに初老に入っている。


油の乗った幹部たちよりも、その実力は低いと思われたのだが――。


「なッ!?」


バニラの不意を突いた拳は避けられ、代わりに三日月(みかづき)蹴りを顔面に喰らわされる。


屈んだ姿勢から攻撃を放った彼の勢いに合わせたカウンターによって、バニラは飾られた仏像へと叩きつけられ、そのまま屋上にあった美術品を巻き込んで粉々になった。


大の字に倒れたバニラに向かって、レカースイラーは両腕を組んで言う。


「なかなかの踏み込みだ。どうやらお前は、素晴らしい師に恵まれたようだな」


そして、着ていた道着のような服を肌けさせ、上半身を(あら)わにする。


年齢を感じさせない鍛え抜かれた身体が、そこにはあった。


至るところに古い傷が見えるのは、これまで戦い続けてきたレカースイラーの生き様を表しているようだ。


「どうした小僧? 私を殺すんじゃなかったのか?」


レカースイラーに見下ろされたバニラは、まるで彼に応えるようにすぐに立ち上がった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ