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#172

それからエレベーター前へと辿り着き、そのフロア周辺をグラノーラは確保するために向かってくるスパイシー·インクの社員へサブマシンガンを撃ちまくる。


かなり大きなビルのせいか、エレベーターの数は六台。


それが一階に来るまでの間に、グラノーラはたった一人で敵を食い止めていた。


「よし来たぞ。ほら、さっさと乗れ」


六台のうちの一台が到着。


グラノーラはバニラとストロベリーに早く乗るように(うなが)すが、自分は乗り込もうとはしない。


「グラノーラさんは乗らないんですか?」


「そうだよ。早く乗りな」


言われた通りエレベーターへと乗ったバニラとストロベリーがグラノーラに声をかけたが。


彼は二人に背を向けたままだった。


そして、いつまでも上がろうとしないバニラたちに苛立ちながら、エレベーター内にある最上階と閉じるボタンを押して言う。


「俺はここまでだ。あとは頼んだぞ」


グラノーラはバニラたちを一瞥すると、エレベーターの扉が閉まる。


バニラとストロベリーは何も返す言葉がなかったのか。


扉が閉まり、エレベーターは動き出す。


身体に重力が掛かり始め、二人は並んだままエレベーター内にあった液晶の数字が上がっていくのを眺めていた。


「ねえ、バニラ」


「なんだ?」


「あたし、レカースイラーってヤツの顔を知らないんだけど、どんなの?」


何気なく声をかけてきたストロベリーに、バニラが返事すると彼女はスパイシー·インクの社長はどんな人物かを訊ねた。


どうやらこの赤毛の少女は、敵のボスの顔も背格好も知らないようだ。


「……忘れた」


「はぁ? マジで言ってんの? どうすんだよ? あたしらはそいつを殺さなきゃいけないんだぞ?」


「うるせぇな。お前だって知らなかったくせに、オレだけ悪いみたいに言うなよ」


「バカなアンタに頼ったあたしがバカだった……。でもまあ、敵のボスなんて見りゃわかるっしょ」


「だな」


バニラとストロベリーが楽観的に問題を解決へと運んでいると、エレベーターが目的地へと着く前に止まる。


慌てて扉の外から見えないように身を隠すバニラ。


だが、ストロベリーはポカンと呆けた顔をしたまま、開いた扉の前に立っていた。


「あ、なんかいっぱいる。上にもこんなにいんのか。ったく、ゴキブリかっての」


開いた扉の前には、武装したスパイシー·インクの社員たちがいた。


それもかなりの数で、ホワイト·リキッドの襲撃を待ち伏せていた警備員たちの第二陣といったところか。


バニラが身を隠しながらストロベリーへ言う。


「おい、ストロベリー。なに突っ立ってんだよ。まだこっちに気づいてねぇみたいだから、このままやり過ご――」


「あたしの名はストロベリーッ! 人はこの真っ赤な髪を見て、あたしのことを燃える女と呼ぶッ!」


だがストロベリーは、気持ちが(たかぶ)っていたせいなのか。


突然声を張り上げた。


そして上着のポケットに入れていたドリンクボトルを飲み干し、どうしてだかエレベーターを降りて敵へと突っ込んでいく。


走りながらも彼女の身体は、まるでバーテンバーがカクテルを作るときに振るシェイカーのように全身を上下に震わせ始める。


目の瞳孔(どうこう)が開き、その全身には刺青でも入れたかのような模様(もよう)が浮かび上がっていた。


先ほど飲み干したドリンク――トランス·シェイクの効果が身体に現れたのだ。


「なんだこの少女(ガキ)ッ!? メチャクチャ強いぞッ!?」


「いいから殺せッ! 相手は一人だッ!」


突然名乗って襲い掛かってきたストロベリーに、浮足立ったスパイシー·インクの社員たちは、上手く対応できずに次々と殴り飛ばされていった。


バニラはその様子を眺めながら、エレベーターの閉じるボタンを押した。


再び動き出すエレベーター内で彼は呟く。


「ま、いっか。ドリンク飲んでるし、死にはしないだろ……」

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