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#160

街へと入ると、マチャたちは早々に移動販売車を乗り捨て、狭い路地を歩いて行く。


大通りにはスパイシー·インクで働く警備員たちがうろついており、遊園地に向かう前からしていた簡単な変装――帽子を被る。


マチャはキャスケット、ダークレートのほうはハットタイプの帽子だ。


「おい、ちょっと欲張り過ぎじゃないか……」


「えッ、でもカカオに食べさせてやりたいし」


こんな状況だというのに――。


ダークレートは大量のクレープを袋に詰めていた。


せっかくの遊園地が台無しになったのだ。


せめてカカオ――ついでにバニラやストロベリーにも移動販売車から取ったクレープを食べさせてやりたいと、両手にその袋を持っている。


「それに、アタシらだけクレープを食べたって知ったら(わめ)き出すよ。ズルいズルいッ! とかいって」


「黙っていればバレないだろう?」


「甘いね、マチャ。あいつはそういう他人が自分よりもいい目に遭っているとかに敏感(びんかん)なんだから」


「……言われてみればそうだな。でも、邪魔になったら捨てろよ」


それからマチャたちは、警備員の包囲を抜けて狭い路地を進んでいく。


スラム内なら彼女たちのほうが詳しく、スパイシー·インクに見つかることなく隠れ家へと到着することができた。


おそらくはスパイシー·インクの社員たちはスラムの警備――仕事を頼まれることなどなかったのだろう。


途中で数人の警備員の姿は見かけたもののなんとかやり過ごし、スラムに住む者しか知らない道を通ったおかげだ。


「もうすぐだぞ」


マチャがダークレートに、目的地が近いことを伝えた。


グラノーラか聞いた隠れ家とは、スラム内にある元は地下にある飲食街だった。


当然ながらすでにそこにある店舗は廃墟と化しており、近くに住む人間も近寄らない場所だ。


マチャはその店舗の一つへと入り、朽ち果てた店内にある扉をノックする。


「ワニャンワニャン」


「なにそれ……? ちょっとキモいんだけど……」


何かの合言葉だろうか。


マチャはノックを三回し、次に何故か犬と猫の鳴き声が混じった声を出した。


それを見たダークレートは、意味が分からないと若干(じゃっかん)引いている。


そして、扉が開くとそこにはグラノーラの妹であるシリアルがいた。


「マチャ! 兄さんから聞いていたけど、無事だったんだね!」


「シリアルも元気そうで何よりだ」


笑みを交わし合う二人を見ても、ダークレートはまだ先ほどの合言葉を引きずって顔をしかめていた。


「さあ、ダークレートも入って」


「は、はい……。てゆーかワニャンってなに?」


「いいからいいから」


「は、はぁ……」


シリアルはマチャを中へと入れると、そんなダークレートのことなど気にせずに彼女の手を引いた。

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