#157
――マチャとダークレートがボボティたちスパイシー·インクの集団を引きつけていた頃。
バニラとストロベリーは、すでに遊園地の外へと出ていた。
バラバラに逃げように言われたはずなのだが。
何故かストロベリーは彼の後について行っている。
「なんでついてくんだよ? マチャからバラけろって言われただろ?」
「いいじゃん別に。なんか思ったよりも追って来ないし」
「それはマチャが囮になってくれてるからだな」
「そんなことよりもカカオ持つの代わってよ。結構重いんだよ、この子」
ストロベリーは小熊のカカオを抱えて走るのに疲れたのか。
バニラに渡そうと横に並ぶが、彼は受け取らない。
「お前さぁ……。オレにカカオを渡したら自分だけ逃げるつもりだったろ?」
「んなわけないじゃん。ホントに重いんだって」
「それじゃあれだ。ついて来ればオレに敵を押し付けられるとか考えてたな」
「ひどッ! 信用ないな~あたし」
「そりゃないだろう。いつも大事なとこでいなくなるし。ま、別にいいけど」
そんなやり取りを見たカカオは呆れてため息をつくと、ダークレートの姿がないことが心配なのか。
ストロベリーに抱かれながら、後ろへと視線を向けていた。
二人が軽口を叩き合いながら遊園地の駐車場へと出ると、彼らの前に一台の車が飛び込んでくる。
目の前で急停車した車の窓からは、ホワイト·リキッド本店の従業員――グラノーラが顔を出した。
「おいお前ら、早く車に乗れ」
叫ぶグラノーラを見て、バニラとストロベリーはポカンと口を開けていた。
「グラノーラさん? なんでここに?」
「遊びに来たの? 男一人じゃ寂しくね?」
「お前らを助けに来たんだよッ! いいから早く乗れ!」
怒鳴られたバニラとストロベリーは、言われたまま車へと乗り込むと、駐車場を後にした。
そして移動中の車内で、グラノーラから現在の状況を聞く。
ホワイト·リキッドの本店が襲撃されたこと。
そこにいた従業員全員が殺されたことを端的に説明される。
グラノーラの話を聞き終わると、バニラが彼に訊ねる。
「ジェラートさんは無事なんですか?」
「あぁ、俺はあの人に指示されてお前らを探してたんだ。つーかなんでお前らはこんなときに遊園地なんかに行ってんだよ?」
のん気に遊んでいたバニラたちを責めるような言い方をしたグラノーラ。
彼の言い方に、ストロベリーが不機嫌そうに言い返す。
「前からマチャと約束してたんですぅ。別にいいじゃん。ご褒美に遊園地連れて行ったってさぁ」
「グラノーラさん。マチャがまだ遊園地にいるんだけど」
バニラはストロベリーを無視して、マチャがまだスパイシー·インクと戦いってることを伝えた。
だが彼はジェラートからの指示で、バニラ、ストロベリー、ダークレート三人を優先して助けるように言われていると返事をした。
その理由は、三人がトランス·シェイクを使用できるからだと思われる。
「今はお前らの保護が最優先だ。だからマチャの奴も囮になったんだろ。あいつには悪いが、このまま逃げるぞ」
バニラはジェラートの指示ならば何も言えないと、残念そうに俯いた。




