#15
ジェラートはコートを羽織った洋装――ウエストコート姿。
真ん中で分けたショートカットの金髪で、手足が長く、身長は二メートルくらい。
さらに胸が大きいせいか、男装をしていても外見だけで女性だとわかる体型をしている。
笑顔で挨拶をした彼女は、店内へと入って来る。
「おはようございます、ジェラートさん」
ナイトクラブ襲撃時にも表情に変化などなかったバニラだったが。
ジェラートのことを見て思わず顔がほころんでいた。
年相応の十代の少年らしい幼さがある笑顔だ。
挨拶をしながらバニラは、カウンター内から出て、ジェラートの前へと駆け出していく。
「今日はどうしたんですか? 急に店に来るなんて」
「実はね。君の働いている店を変えようと思ってさ」
「えッ……?」
ジェラートの言葉にバニラは言葉を失った。
彼女の話では、バニラをこのホワイト·リキッド三号店から二号店へ異動するということだった。
まさかロッキーロードが何か自分のことを問題があるようにジェラートに言ったのか。
それとも客がまったく店に来ていないことが理由なのか。
だとしたら、やはり自分の責任なのかもしれないと、バニラはガクッと肩を落とした。
「すみません……。オレが臭いから……」
「うん? どうしたの急に?」
ジェラートはバニラの顔を両手で挟むように掴み、彼の顔を自分に向けさせた。
顔を真っ赤にしながら目をそらすバニラ。
そんな申し訳なさそうにしている彼の額に、ジェラートは自分のおでこをくっつけた。
彼女の体温がバニラに直接伝わって来る。
「ジェ、ジェラート……さん?」
「うーん、熱はないようだね」
バニラは至近距離にあるジェラートの顔を見て思う。
彼女は、こんな客も逃げ出すような汚く臭い自分のことをいつも心配してくれる。
自分はそんなジェラートのことが大好きだ。
背も高くて、包み込んでくれそうな大きな身体を持ったジェラートが大好きだ。
綺麗でいい匂いがして、胸が大きいジェラートが大好きだ。
――と、バニラのジェラートに対する気持ちが、まるで大当たりしたスロットマシンのように溢れる。
「なんか勘違いしているみたいだけど、まあいいや。話を続けさせてもらうね。ちょっと三号店の近くまで来たものだから、君が次に行く店のマスターと顔を合わせておこうと思ってね。おーい、外になんかにいないで入っておいでよ」
ジェラートはバニラにそう言うと、店の開いている扉に向かって声をかけた。
すると彼女と同じく、ウエストコート姿の人物が店内に足を踏み入れる。
バニラの視線が扉へと向く。
その人物はジェラートほどではないが。
172cmはあるバニラよりも少し背が高く、緑色の髪を一つに纏めている鋭い目つきをした女性だった。
「彼女の名前はマチャ。ホワイト·リキッド二号店のマスターだよ」




