#153
ゴーカートを乗り終えたバニラたちが、マチャとカカオがいるベンチへとやって来る。
「マチャ、腹減ったよ~」
「アンタ、さっきハンバーガー食べたばっかでしょ? あんまり食べ過ぎると太るぞ」
「あん? あたしは普段から気をつかってから絶対に太らねぇし」
ストロベリーを注意するダークレート。
軽く言い合いを始める二人を見て、マチャは呆れながらも売店へ行くことを提案した。
彼女の言葉を聞いたダークレートが口を開く。
「ちょっとマチャッ! 今から食べたら絶対にこいつ、夜ご飯を残すよ」
「それもそうだな」
「いや残さないから! カカオにも食わせないからなんか食いに行こうよ~」
猫なで声を出すストロベリーに続き、バニラも言う。
「オレもなんか食いたい。甘いもんとか」
「バニラ、アンタまで……」
バニラにも呆れるダークレートを宥め、四人と一匹は売店へと向かった。
それからマチャは、それぞれにチュロスやソフトクリームを注文する。
「お前ら味はどうする? 名前通りでいいか?」
「いやマチャ、それだとアタシはどれになんの?」
「うん? お前とカカオはチョコレートだろう?」
ダークレートに返事をしたマチャは、バニラ、ストロベリー、チョコレート、抹茶味のソフトクリームと人数分のチェロスを頼んだ。
それを頬張りながら一休みすることにし、売店近くにあったよくあるプラスチック製のガーデンテーブル&チェアに腰を下ろす。
「よし、次は何に乗ろうか」
「まだ乗るつもりかよ? オレ、そろそろ疲れてきた」
「まだまだだな、バニラは。あたしはぜんぜん疲れてない。まだまだ乗れるぞ」
「何がまだまだなんだよ……」
ガハハと笑うストロベリーと少し疲れを見せているバニラが話している前で、ダークレートがマチャに声をかける。
「なんか元気ないじゃん?」
「うん? そうか? そんなことはないが」
マチャの表情から何か感じ取ったのか。
ダークレートが彼女を心配いたが。
マチャは気にするようなことはないと返事をする。
「ねえ、マチャ……」
「なんだ、ダークレート」
「楽しいね。こういうの」
照れながら言ったダークレートの表情を見て、マチャは言葉を失っていた。
微笑んでいるダークレートの横顔を眺め、彼女が見ているバニラとストロベリーと巻き込まれているカカオのほうへと視線を移し、その光景を見て黙ってしまっていた。
「明日も休むか、仕事……。休んで今度はお前の言ってた水族館にでも……」
「え? ホントどうしたの? なんか変だよ、今日のマチャ」
「そうだな……。今日の私はなんか変だ……」
マチャは驚いているダークレートに向かって、まるで自嘲するように笑い返した。




