#137
それからホワイト·リキッド本店に到着。
時間的に、これから夜の部が始まるため、店内はこれから来る客に対応するために準備をしている状態だった。
「こんにちはグラノーラさん。ジェラートさんはいますか?」
「あぁ、お前らか。ジェラートさんなら奥にいるよ」
ジェラート不在時には、従業員たちをまとめているグラノーラに声をかけ、三人は店の奥へと進んでいく。
従業員たちは三人を見ると、気さくに笑みを浮かべ手を振っていた。
それなりに社歴が長いマチャはともかく、ダークレートやストロベリー二人も、もうすっかり彼ら彼女らと馴染んでいるのがわかる光景だ。
「なんかイイ感じじゃない」
「さっきまでブスッとしてたくせに」
「それとこれとは違うじゃん。いや~やっぱ職場の雰囲気が良いといいね~。ていうかさ。モカってどこにいんの? あたし、ずっと捜してんだけど?」
「アタシが知るわけないでしょ」
「アンタに訊いてないし。ねえマチャ~、モカは? モカどこにいんだよ?」
店内を進む三人。
モカとはストロベリーたちと一緒にロッキーロードのもと――ホワイト·リキッド三号店にいた少女だ。
前に起きた事件――彼女たちが二号店やマチャの家に住むようなになったきっかけの襲撃でサニーナップは殺されたが。
モカは生存し、その後は姿を見せていなかった。
ストロベリーがマチャへと訊ねると、彼女が言う。
「あの子はジェラートさんの指示で、別の仕事をしているみたいだよ」
「へー、だからいつも店にいないのか。会えないの?」
「それは難しいんじゃないか? 私もグラノーラさんたちも彼女の顔を見てないしな。余程特別な仕事なんだろう」
「そっか。ま、生きてんならそのうち会えるっしょ」
そんな会話をしながら奥にある控室へと辿り着き、部屋の扉をコンコンコンとノックする。
中から女性の声で入っていいと返ってきたので、マチャはドアを開けて中へと入った。
「来たわね、三人とも」
中にはこの店――ホワイト·リキッドの経営者であるジェラートが待っていた。
マチャが笑みを浮かべて挨拶し、その頭を下げると、ストロベリーは嬉しそうに彼女へと抱きつく。
だが、ダークレートだけは強張った表情でマチャの後ろで、まるで身を隠すように立っていた。
「店のほうは大丈夫なんですか? 普通に営業して?」
マチャは三号店に続き、二号店まで閉店なり、さらに自分の家が襲撃を受けたことで、本店にも影響があるのではないのかと心配していた。
そんな彼女に向かってジェラートは微笑む。
「店のことなら問題ないよ。疑われてはいるんだろうけど、手を出して来るならとっくにしてきているだろうしね」
「それはそうですけど……」
不安そうに言うマチャ。
ジェラートはそんな彼女のことなど気にせずに、話を始める。
「とりあえず、あなたたちの住むところと今後のことなんだけど」




