#130
ストロベリーの言葉と共に――。
ホワイト·リキッドとスパイシー·インクの面々のぶつかり合いが始まった。
互いに武器を振り回して、倉庫内は乱戦状態に入る。
その中をかき分けて、ストロベリーは拘束されたマチャとダークレートのもとへ行く。
「助けに来てやったよ、二人とも。あたしに感謝しな」
「あぁ、礼を言うよ、ストロベリー。だが、よくこの場所がわかったな」
二人の手足を縛った縄を解きながら、得意気に言うストロベリーにマチャは訊ねた。
どうやら彼女の話によると――。
バニラの友人を名乗る少年がこの場所を教えてくれたようだ。
「あたしはとりあえずクリムのとこに逃げてたんだけど、そこにそいつが来てね。それで場所を聞いてホワイト·リキッドのみんなを連れてきたってわけ」
「……もしその子が来なかったら、アンタも助けを呼んで来てくれなかったかもなんだ。マジで助かったぁ」
それを聞いたダークレートがホッと胸を撫で下ろした。
ストロベリーが拾った鉄パイプを二人に渡すと、マチャは乱戦の中へと飛び込んでいく。
「今回もあたしの手柄だぞ、あたしの」
「はいはい、助けに来てくれてありがとね」
「よろしい。じゃあさっさとこいつらぶっ殺して遊園地に行くぞッ!」
「ご褒美あるとやる気がちがうなぁ……。ホント単純なヤツ……」
「あん? なにかいった?」
「いやなんにも」
そんな彼女に続いて、ストロベリーとダークレートも後を追った。
――三人が乱戦の中で合流していたとき。
バニラはリコンカーンに掴みかかっていた。
すでにトランス·シェイクを飲んでいるバニラにとって、身体さえ捕まえてしまえば無力化するのは容易い。
「もう終わりだぞ。マチャたちを攫いやがって、お前だけは許せない!」
「クソッ!? まさかこんだけの人数をそろえてくるとは……。だが、これで黒幕の正体は確定だな」
「んなもん知ったって意味ねぇよ。だってお前はここで死ぬんだからな!」
圧倒的な力でリコンカーンを押さえ込むバニラ。
以前の彼だったらこうも簡単にリコンカーンを捕まえることはできなかったかもしれないが。
マチャに教えられた格闘技術によって、警備会社の幹部として鍛えられたリコンカーンにも後れを取らない。
もうジャークやチゲを相手にしていたときは違う。
バニラはトランス·シェイクの力に頼るだけになく、それに上乗せして実力を上げているのだ。
そのため、リコンカーンはなんとか逃げようとするが。
バニラのことを振り切ることができずにいた。
このまま捕まってたまるか――。
リコンカーンがそう思いながら顔を強張らせていると――。
「兄さん……。もうやめよう……」
二人が取っ組み合っているその場に、リコンカーンの弟――エンチラーダが現れた。




