#126
――エンチラーダからリコンカーンの居場所を聞き、バニラがまさに向かっているとき。
そのリコンカーンは、攫ってきたマチャとダークレートの前にいた。
彼らがいるところは、エンチラーダが言っていたテイスト·アイランドの港にある倉庫内だ。
積み荷に囲まれる中で、拘束したマチャたちを見下ろしている。
「なあ、いい加減に吐いたらどうだ?」
「だから……なんのことだと言ってるだろう」
「とぼけてんじゃねぇよ。裏に誰かいんだろ? お前らを使ってスパイシー·インクを潰そうとしてる奴がよぉ」
リコンカーンは口こそ悪いが。
捕えたマチャとダークレートに手を出さずに、紳士的に尋問していた。
当然マチャは喋らない。
それはダークレートも同じで彼女たちは、すでに自分たちに指示をしている人間――ジェラートの存在を確信しているリコンカーンに白を切り続けている。
「こう見えても俺は女には優しいんだ。あんまり甚振ったりするのは好きじゃねぇ。俺の気が変わらねぇうちに喋っちまったほうがいいぜ」
「あいにく、お前の言う黒幕なんていない。私がこいつらにやらせてたんだよ。私はお前らスパイシー·インクの人間が大っ嫌いだからな」
「テメェの好き嫌いなんで訊いてねぇんだよ。スパイシー·インクに恨みがある奴なんてこの島には腐るほどいんだ。第一に、テメェみてぇな女が、人を集めて抗争してやろうなんて人間じゃねぇことくらい見てわかんだよ」
何も言い返せないマチャは、リコンカーンの言葉にただ顔を強張らせるだけだった。
その傍で、黙って二人の会話を聞いていたダークレートが思う。
(やっぱウソが下手だよね、マチャって……。ともかく今は逃げたストロベリーに期待するしかないけど、大丈夫かなぁ……)
リコンカーンの襲撃のときに――。
すぐに危険を察したストロベリーは逃げ切ることができていた。
ダークレートが思うように、ここは彼女がホワイト・リキッド本店にいる仲間に知らせ、救出してもらうしか道はないが。
正直、あまり頼りにはならない。
(あいつ、自分のことしか考えないからなぁ……。フードコートのときも速攻でいなくなったし……)
ダークレートは拭えない不安を抱えながらも、ストロベリーが来るまでどう時間を稼ぐかを考えていた。
「うぐぐ……」
「ワハハ。いちいち顔に出るよな、テメェは」
「うるさいッ! 私たちに何をしようが、お前が望む答えなんて出ないぞッ!」
リコンカーンはマチャのことが気に入ったのか。
まるでからかうように意味のない問答を続けている。
ダークレートは考える。
何故リコンカーンは自分たちを拷問しないのか。
何故こんな無意味な時を過ごしているのか。
(こんなの……まるで何か待っているみたいじゃない……)
リコンカーンの態度は不可解だが。
自分たちにとっては都合がいいと、ダークレートは内心でほくそ笑んでいた。




