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#111

――ストロベリーにジェラートに呼ばれていると聞いたマチャは、バニラたちと別れてホワイト·リキッド一号店――本店へと来ていた。


今日は店を開けていないのか。


皆、店に来ていると聞いていたが、従業員たちの姿は見えない。


店内は静かで暗く、照明も落とされていた。


マチャは地下室に集まっているのだろうと、奥の階段へと歩を進める。


一段、また一段と、彼女の足音が静まり返った暗闇に(ひび)く。


その足取りは、とても軽快とはいえなかった。


ラメルの死の原因を作った者たちは全員始末し、主犯格であるベヒナとチゲは捕らえた。


それでも彼が戻って来るわけではない。


マチャはそんな虚しさを感じながら地下室の前に立ち、扉の取っ手に手を伸ばす。


だが、ドアノブを(にぎ)った手が止まる。


マチャの脳裏に浮かぶのはラメルの笑顔や、これまで彼と過ごしてきた日々だった。


「……なあ、前に俺が言った話、考えてくれたか?」


そして、彼の言葉が頭の中を埋め尽くす。


「で、どうなんだ? その……前に訊いた店を辞めようって話については?」


マチャはドアノブを握ったまま思う。


あのとき、ラメルのことを受け入れていれば彼は死ななかったと。


二人で逃げていれば、きっと今もラメルと共に波風の立たない生活を送っていただろうと。


「ラメル……私は……」


マチャがラメルの名を呟いたとき――。


部屋の中から声が聞こえる。


「マチャ、そこにいるんでしょ? 早く入って来なよ」


ジェラートの声だ。


雇い主がマチャに中へ入るように言ってくる。


マチャは思う。


そうだ。


ラメルはもういない。


もう自分を止める理由は何もないのだと。


マチャは声をかけられたというのに、わざわざ扉をノックしてから中へと入った。


そこには椅子(いす)(くく)り付けられたチゲと、声の主――男装の麗人ジェラートが立っていた。


「ずいぶん遅かったじゃない。なにかあった?」


手足はもちろん頭さえ固定されているチゲの傍で、満面の笑みでマチャを迎えるジェラート。


マチャは、そんな彼女に深々と頭を下げる。


「いえ、特にあったわけではないです。遅くなってすみませんでした」


「そう、ならいいんだけどね」


マチャは顔を上げると、チゲのほうを見た。


拷問された後もなく、バニラとの戦闘で負った傷が少し見えるくらいだ。


まだ情報を引き出してないのか。


そういえば以前――ベヒナのときも同じような状態だった。


拷問された後はなく、今目の前にいるチゲと同じく衰弱(すいじゃく)していた。


自白剤のような薬でも使ったのか。


彼女がそう思っていると――。


「さあ、いいよ。あなたの好きにして」


「え……?」

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