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#102

――スパイシー·インクの所有するビルの前に、二台の大型トラックが停車した。


その荷台からは、顔を布で覆った者たちが続々と降りてくる。


「これ、息苦しんだけど。ねえマチャ、取っていい?」


その中の一人赤毛の少女ストロベリーが緑髪の女性に訊ねた。


訊ねられた緑髪の女性――マチャは何も答えずに、首を左右に振っている。


それを見たストロベリーがムスッと(ほお)(ふく)らませてると、黒髪ロングヘアの少女――ダークレートが声をかける。


「顔バレしないためなんだから、それくらい我慢しな」


「いや、だってこれ可愛くないんだもん。つーかカカオはどうしたの? 連れてきてないじゃん」


「クリムに預けてきたんだよ。連れて来れるはずないでしょうが」


二人がそんな会話をしていると、彼女たち同じように布で顔を覆った男がトラックの運転席から降りてくる。


ホワイト·リキッド一号店の従業員であるグラノーラだ。


グラノーラは荷台から降りてきた者たちの人数を数えると、全員へ静かに声をかける。


「これからスパイシー·インクの幹部、チゲの一派を叩き(つぶ)す。作戦は特にない。何か質問がある奴はいるか?」


「はい」


白髪の少年バニラが力の入っていない手を挙げると、グラノーラが彼のほうを向いた。


「おう、パーティーにいた新人だな。なんだ?」


「全員殺していいんですか?」


「チゲ以外はいいぞ。あいつからは組織の情報を聞き出したいって、ジェラートさんから言われている」


グラノーラの言葉に、荷台から出てきた者たちが表情を強張らせていた。


それは、誰もがラメルの死に関わった男を殺せないことに、激しい(いきどお)りを感じていたからだ。


「そうですか。ホントは殺したいけど、ジェラートさんがいうならしょうがないですね」


「お前、敬語を使えるようになったんだな」


バニラの喋り方を聞いたグラノーラが訊ねた。


バニラは、こないだの本店でのパーティーでは、目上の人間に対して言葉使いがなっていなかった。


ジェラートにくらいにしか気を遣って話しているように見えなかったのだ。


だが、あれから約一ヶ月で敬語を使えるようになった白髪の少年を見て、グラノーラは感心している。


そう言われたバニラは(うつむ)いてぼやく。


「そっか……オレ、いつの間にか敬語使えるようになってたんだ……」


「なんだ? 自分でもわからないで使ってたのかよ?」


「そうみたいです」


不思議そうに見返してくるバニラ。


グラノーラはそんな彼の白髪の頭を撫でると、再び目の前に立つホワイト・リキッドの面々へ声をかける。


「じゃあこいつが自覚したところで、これからビルへ突入する。中にいる奴は誰も逃がすなよ」


けして声を張り上げず、静にそう言ったグラノーラに(うなづ)き、彼ら彼女らはビルへと歩を進めた。

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