表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
102/219

#100

――その後、大した会話もなく、マチャはジェラートと別れてホワイト·リキッドの本店を出た。


彼女が店の外へ出ると、そこには二人の男女が停車した車の前に立っていた。


ホワイト·リキッドの一号店の従業員である兄妹。


兄のグラノーラと妹シリアルだ。


「よかったら送ってくぞ」


「私たちも今仕事終わって帰るところだから」


兄妹はマチャを家まで送ると言い、彼女は頭を下げてグラノーラの車の後部座席に乗り込む。


続いてグラノーラが車のドアを開けて運転席へ、シリアルは助手席に座る。


グラノーラはエンジンをかけてハンドルを握り、アクセルを踏み込んだ。


「あいつらはもう仕上がってるんだろ? じゃあ近いうちにラメルを()った連中を始末しに行けるな」


グラノーラが何気なくマチャへと訊ねた。


だが、彼女は返事をしない。


(うつむ)いて自分の靴を見つめているだけだ。


そんなマチャのことをバックミラーで見たグラノーラは、その顔をしかめる。


「正直ムカつくわ。お前のさ。その子供(ガキ)どもに対する執着」


「やめなよお兄ちゃん」


「お前は黙ってろよ。こいつは俺たちの命にも関わってくんだぞ」


妹が止めてきたが、グラノーラは彼女を制して話を続ける。


「罪悪感を覚えるのはわかるし、ジェラートさんだって好き(この)んで子供(ガキ)どもを使ってるわけじゃねぇ。それなのにお前は――」


「お兄ちゃん! いい加減してよ!」


グラノーラの言葉を聞いて、シリアルが(たま)らず声を張り上げた。


彼女は今にも泣き出そうなほど感情的になって兄を止めてくる。


「そういうお兄ちゃんだって、最初はマチャさんと同じだったじゃない!?」


「そうだ……。だけど今はもう受け入れる。だから俺はこいつに――」


「そんなの、わざわざ他人に言われるようなことじゃないでしょ!?」


兄の言葉を(さえぎ)って叫び続けるシリアル。


これにはさすがのグラノーラも黙り、不機嫌そうに車の速度を上げていく。


そんな雰囲気の中で、マチャが口を開く。


「グラノーラさん、シリアル……。すみません……。私のせいで二人を喧嘩(けんか)させてしまって」


慇懃(いんぎん)に謝罪するマチャへと振り向き、シリアルが彼女に微笑む。


「そんなのマチャさんが気にするようなことじゃないよ。お兄ちゃんが悪いんだから」


「お前なぁ……」


「だってそうでしょ?」


その後、車はマチャの自宅へと到着。


彼女には車を降りると、窓を開けてきたシリアルと不機嫌そうにしているグラノーラに向かって、また頭を下げた。


「グラノーラさん……ご忠告、感謝します」


「ケッ、わかりゃいんだよ」


「でも、それでも私は、あいつらが戦うのが嫌です……」


マチャが顔を上げてそう言うと、グラノーラは返事をせずに車を発進させた。


去って行く車の中では、兄に食って掛かっているシリアルの姿が見える。


何も言わずに車を発進されたグラノーラに怒っているのだろう。


先ほどと同じように、今にも泣きそうな表情で(わめ)いている。


そんな妹に対して、グラノーラは困っていそうだった。


「その通り……。あんたの言う通りだよな、グラノーラさん……」


マチャはそんな兄妹を見て、また深々と頭を下げた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ