高樅に説明しなければならない、怖くても
翌日。
「で? これから夏になろうっていう時に、雪を降らせたことについては?」
「えっと、それは異常気象と言うことで・・・・・」
「雲どころか、気圧配置さえ梅雨時期のものだったつうのに、そんなんでまかり通ると思ってんのか!」
「停滞前線が何らかの事情で雪を降らせたとか」
「その何らかの事情てのは、自然には起こらんことだろ! だいたい、何だよ、永久凍結って。あんな術いきなり使うんじゃねえよ。凍結で押さえておけよ」
「いえ、何と言うか。興奮状態でありまして。それにあの状況で獏を止めるのには、あれしかないかなって……ハハ……」
高樅の事務所に山田の姿はあった。報告書を持参すると、ソファに対面している高樅とそんな会話をした。乾いた笑いしか零れなかった。
「まったく、人間に思いっきりばれてるは、過剰な術を使うは、自然現象を無視するは。これ、どう《境界》の担当教諭に伝えるんだよ」
「そこは高樅さんのお力と言うか、一言を付け加えていただいて……後は花咲里親子の記憶を消していただいて……僕、そちら系の術苦手なので」
「するわけねえだろ! 自分で責任取れ!」
「そこを何とか……」
「まあ、獏を補足した点は、認めねばならんのだよなー。お前が封印したあの黒獏な、かなり悪質な部類だったらしい。境界の治安部が手を焼いていたくらいだからな」
「それなら、封印する時にちょこっとなことがあってもお咎め……」
「なしになるわけねえだろ」
「ですよねー」
「ま、いい。とっと帰れ。仕事してろ」
「はい……高樅さん」
「何だ、今度は?」
「聖来ちゃん……松林の娘さんにちゃんと話をしようと思います。白獏が夢の木って単語もぽろっと言っちゃいましたし」
「好きにしろ、それくらいでお前の懲罰が変わるとも思えん」
「はい、ですよね」
立ち上がって一礼をした。
「幸喜」
高樅に呼び止められた。
「お疲れさん」
見向きもしなかったが、手を振っていた。もう一度礼をして、部屋を出た。そのドアが閉まる音を聞き届けると、高樅は携帯電話を取出しコールした。数コールで相手が出た。
「もしもし、高樅です。ちょっとお願いがあるんですよ。いえ、御手間も何もかけませんよ。昨日あったこと口外しないでもらいたいんですよね、花咲里さん。ええ、ええ。そうです。いやーこちらこそバカな後輩がご迷惑をかけてしまって。あ、そうなんですか。それは良かったですね。じゃ、また今度。ええ、じゃよろしくお願いします。失礼します」
切ると、携帯電話を山田が座っていたソファに投げた。
「面倒くせえな」
言っている口元はニッコリと笑んでいた。




